最新記事

エネルギー

中国の独立系製油所、安いロシア産原油購入か コロナ規制明けの需要増で

2022年6月17日(金)11時24分

クプラーのデータによると、山東省の1―5月の原油輸入は日量168万バレル、中国全体の19.8%相当。前年同期は日量256万バレル、26.3%相当だった。

2017―21年のデータを見ると、山東省は例年6月に平均日量222万バレルを輸入している。従って、輸入量が平均に戻るなら今月の輸入量は日量50万バレル以上増えることになる。

高まる稼働率

ロシアによるウクライナ侵攻を受け、欧米がロシア産エネルギーに制裁を科す中、中国は今年に入ってロシア産原油を最も多く購入している国の1つだ。

JPモルガンのアナリストは、1日付の顧客向けメモで「推定によると中国は、日量100万バレルのロシア原油を容易に追加購入できる」と分析した。

また、ウッド・マッケンジーのアナリスト、ダフネ・ホー氏は、ロシアは2022年末までに日量250万バレル前後の原油の輸出先を欧州から変える必要があり、有力な変更先は中国だとしている。

中国によるロシア産原油の追加購入余力を予想するのは難しい。だが、トレーダーは中国が新型コロナ関連の制限を完全に緩和し、石油需要がコロナ禍前の水準に回復すれば、製油所の生産能力が日量140万─200万バレル増えると見込んでいる。

別のシンガポールのトレーダーは、ティーポット製油所は稼働率を5月下旬の約60%から6月末までに約70%に引き上げる可能性があると予想した。国営企業はティーポット製油所からの石油製品の購入を徐々に再開しているという。

稼働率が10%ポイント上がると、原油輸入は日量30万バレルほど増える。

山東省のコンサルタント会社Longzhongのデータによると、ティーポット製油所の平均稼働率は4月に50%を割り込み、2020年3月以降で最低となったが、先週は64%に回復した。

ただ、原油と精製品の在庫は高水準にあるため、短期的には輸入が限られるかもしれない。調査会社・ボルテクサのデータによると、陸上の商業原油在庫は5月下旬時点で9億バレル超と9カ月ぶりの高水準で、2020年8月に記録した過去最高の10億バレルに近づいた。

トレーダーによると、余剰分を解消するため政府は先週450万トンの燃料輸出枠を追加で発行したが、余剰在庫を解消し、輸入増を正当化するには、国内の燃料需要の増加が不可欠だという。

(Muyu Xu記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口の中」を公開した女性、命を救ったものとは?
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 5
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 8
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 8
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中