中国電力が自社の送電網と切り離した「太陽光発電・駐車場」を作ったわけ
検証される課題と将来的な発展
ソーラーカーポートの開発に携わるパナソニックの西川氏は、地域で電力を循環させる取り組みに挑戦してきたと話す。EVの利用を促進するソーラーカーポート事業は、再生可能エネルギーで電気を作るだけでなく、電力を使う需要を増やすことも狙いのひとつだ。
同社は岐阜県多治見市で、同様の事業を地元ベンチャー企業であるエネファントと組んで進めている。「多治見モデル」とも称され注目されているが、今回は電力会社との協業。その点に大きな違いがあり、より長期的な発展を見据えた取り組みと言えそうだ。
広島産業会館での実証事業で検証されるのは、主に3つ。
(1)完全自立型EVステーションシステムの運用・検証
(2)複数法人と周辺住民によるEVシェアリングサービスシステムの運用・検証
(3)電力系統から完全に分離したソーラーカーポートの商品化の検討
4月4日に行われた記者発表会で中国電力の前原利彦氏は、EVシェアリングサービスの課題として運用の実現性を挙げた。
ガソリン車のシェアサービスであれば、ガソリン残量が少ない場合、使った人は給油して車を戻すため、次の利用者がすぐに同じ車を使える。しかしEVに関しては、バッテリー残量が少ない場合、次の利用者はすぐに同じ車を使えない可能性がある。
気象条件が季節によって変わるなかで、電力系統に繋がずに果たして安定運用が可能なのかも懸念されるところだ。電力会社の優位性を捨てた挑戦と言ったら言いすぎだろうか。
ただし、この運用が成功すれば3つめの検証項目である商品化へ近づく。電力系統に繋がないということは、電力供給が困難な場所や電気工事の施工費用が高額となる場所においてもEV導入の選択肢を拡大できるということでもある。
完全自立型EVステーションの特徴のひとつに、可搬型蓄電池システムもある。ステーション内に1kWhのバッテリーモジュール(持ち運び可能な蓄電池)を8個搭載しており、実証事業に参画したAZAPAが開発した。
将来的な展開として、商用EVや電動自転車などの小型モビリティに装着することが想定されている。