イーロン・マスク、ツイッター買収に「謎のファミリーオフィス」を使っていた
米交流サイト(SNS)ツイッター買収を巡る攻防は、米電気自動車(EV)大手テスラの最高経営責任者(CEO)で世界一の富豪であるイーロン・マスク氏がツイッターを440億ドルで手に入れることで決着した。写真は独ベルリン近郊で、テスラの大規模工場「ギガファクトリー」の建築現場を訪れたマスク氏。Michele Tantussi-REUTERS
米交流サイト(SNS)ツイッター買収を巡る攻防は、米電気自動車(EV)大手テスラの最高経営責任者(CEO)で世界一の富豪であるイーロン・マスク氏がツイッターを440億ドルで手に入れることで決着した。ただ、マスク氏が買収手続きの窓口に指定したファミリーオフィス(自前の資産運用会社)は秘密のベールに包まれている。
テスラ以外に航空宇宙企業「スペースX」のトップなども務めるマスク氏は先に当局への届け出資料で、ツイッター買収については自身のファミリーオフィスが窓口になると明らかにした。
しかしテキサス州オースティンに拠点を置き、マスク氏の資産を管理しているこのファミリーオフィスに関しては、ほぼ何も分かっていない。
当局への届け出資料や法律関連の書類によると、ファミリーオフィスの社名はエクセッション。創設を手伝ったのは元モルガン・スタンレー社員で、何年にもわたり米金融業界との付き合い方についてマスク氏にアドバイスしてきたジャレッド・バーチャル氏だ。
バーチャル氏は1974年生まれ。2016年にモルガン・スタンレーからマスク氏のファミリーオフィスに移籍した。医療系企業「ニューラリンク」やトンネル掘削企業「ボーリング」などマスク氏が率いる他の企業でもCEOや重役を務め、マスク氏の慈善団体の取締役会メンバーも兼務する。
テキサス州会計監査当局の記録によると、バーチャル氏は2021年にはエクセッションのマネジャーとなっている。
バーチャル氏とマスク氏はコメント要請に応じなかった。
ウォートン・スクールのラファエル・アミット教授(マネジメント)によると、バーチャル氏が複数の役職を兼務しているのはファミリーオフィスのマネジャーとして異例で、マスク氏の信頼が厚いことを示している。
「ファミリーオフィスの運営を任せるということは、その人を信用しているということだ。そしてイーロンは(バーチャル氏の)権限が最大限になることを望んでいる」という。
モルガン・スタンレーは最高の資源
モルガン・スタンレーはマスク氏のツイッター買収で資金調達を主導し、助言業務も担う。マスク氏とモルガン・スタンレーが築き、バーチャル氏が支えた何年にもわたる関係が実を結んだ。
マスクがテスラの非公開化についてツイッターに投稿した問題を巡る訴訟で公開された書類によると、マスク氏がテスラの非公開化の財務アドバイザーはゴールドマン・サックスとシルバー・レイクだと投稿した翌日、バーチャル氏はマスク氏にモルガン・スタンレーを推すメッセージを送付。マスク氏はバーチャル氏の考えは公平だと返答していた。
規制の対象外
エクセッションはイアン・M・バンクス氏の人工知能を題材としたSF小説の題名。マスク氏が2015年にアイダホ州で開かれた会合でこの小説を持っている様子が目撃されている。
19年にロサンゼルスの連邦裁判所で行われた名誉棄損を巡る訴訟でマスク氏は、エクセッションは「基本的に2人で」運営されていると述べた。バーチャル氏以外のもう1人は不明。