誰とでも心地の良い「良質な会話」ができる、テクニックより大事な「意識」とは
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<何気なく話すだけでなく、「対話について考える」ことで会話は単なる情報の伝達を超えたものになれる。最新刊『話すことを話す』から「考えの基本」を抜粋紹介>
「話し方」をテーマにした本が100万部を超えるベストセラーとなって久しい昨今。私たちは「会話」に対して、これまでとは少し違った価値を求めるようになってきたのではないだろうか。
コロナ禍で会話する方法や場面も変化する中で、ただ単に情報を伝達するための言葉のやり取りではなく、相互に心を通わせるようなコミュニケーションとしての「会話の技術」が模索されているようだ。
著書『女ふたり、暮らしています。』が日本でも話題を呼び、韓国では、毎回作家をゲストに迎えてトークするポッドキャスト「チェキラウト──キム・ハナの側面突破」が人気のキム・ハナ氏。彼女は最新刊『話すことを話す』(CCCメディアハウス)のなかで、そうした互いに心地よく、良さを引き出し合うような化学反応にも似た会話を「良質な対話」と呼んでいる。
そして「良質な対話」をするには、小手先のテクニックや話術ではなく、普段何気なくしている「話すこと」について考えること、意識し始めることが大切なのだと言う。ここでは『話すことを話す』から、「良質な対話のために考えること」について書かれた部分を抜粋して紹介する。
『話すことを話す きちんと声を上げるために』
キム・ハナ 著
清水 知佐子 翻訳
CCCメディアハウス
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■音楽としての話し方
今、ビル・エヴァンスとジム・ホール[いずれもアメリカのジャズミュージシャン。ビル・エヴァンス(一九二九~一九八〇)はピアニスト、ジム・ホール(一九三〇~二〇一三)はギタリスト]の『インターモデュレーション』というアルバムを聴いている。
私は音楽が気になる所では原稿を書けない方で、原稿を書くときは、音楽のない静かな所の方がいい。でも、このアルバムは違う。一日中聴いていられるし、聴きながら筆も進む。
この二人の偉大なミュージシャンがコラボした別のアルバム『アンダーカレント』も好きだけれど、原稿を書くときは『インターモデュレーション』の方がいい。不思議なことに、このアルバムをかけておくと、音楽がないときよりも静かに感じられ、日常的な静けさよりも、もう一段上の静けさに包まれているような気がする。
「インターモデュレーション」は電子・電気用語で、「相互変調」と訳され、二つ以上の周波数が互いに干渉現象を起こすことを意味する。このアルバムのタイトルに本当にぴったりだ。ビル・エヴァンスとジム・ホールは、それぞれ自身の内面をのぞいているようでいて、互いに呼応しながらそれとなく近づいては遠ざかる。決してもつれたり、あふれ出たりしない。私が知っている最も美しくて柔らかい干渉現象だ。