最新記事

経済制裁

ロシア、侵攻の代償高く ついに国債デフォルトも、中銀は追加緊急策

2022年3月14日(月)16時24分
モスクワのロシア中央銀行

ロシアにとってのウクライナ侵攻の経済・金融的代償がこれから、いよいよ明らかになっていきそうだ。写真はモスクワのロシア中銀前で2021年3月撮影(2022年 ロイター/Maxim Shemetov)

ロシアにとってのウクライナ侵攻の経済・金融的代償がこれから、いよいよ明らかになっていきそうだ。これまで考えられもしなかったロシア国債の債務不履行(デフォルト)が現実味を帯び、中央銀行のさらなる緊急措置導入が予想される。停止している株式市場も再開したなら暴落間違いなしだからだ。

侵攻によってロシアは西側諸国から世界金融市場の主要部分へのアクセスを断たれ、1991年のソ連崩壊以来の経済危機を引き起こしつつある。

次の節目は3月16日に来る可能性がある。ドル建て国債2本で計1億1700万ドルの支払い期限を迎えるためだ。もっともロシア政府は支払わない意向を既に示している。払うならルーブル建てだとしているが、これもデフォルトに等しい。技術的には30日間の返済猶予期間があるが、これはあまり意味を持たない。支払いがなければ、約100年前のロシア革命時以来のロシアの国際的なデフォルトになる。

S&Pグローバルの首席アナリスト、ロベルト・シフォン氏は「デフォルトはかなり差し迫っている」と指摘した。同社はロシア国債の大幅な格下げを断行している。

ロシアのガス大手ガスプロムと石油大手ロスネフチはここ数日で、債券の国際的な支払いをした。制裁をまだ逃れている政府の準備高が約2000億ドルあり、これがデフォルトは起きないかもしれない一縷の望みともなっている。ただ、デフォルト回避の見通しは険しそうだ。

ロシア中銀は12日、モスクワ証券取引所の株式売買を14─18日も一部例外を除き停止すると発表した。停止中の株式・債券取引が再開された場合、少なくとも短期的に混乱の極みになるのは間違いないだろう。ロンドンやニューヨークの市場に上場していたロシア大手企業は侵攻に際し、上場株の価値が実質ゼロまで下がり、取引が停止される経験をしている。

ラボバンクの通貨ストラテジスト、ジェーン・フォレイ氏は「ロシアの資産を持ったままになっている金融機関は多い。どこも処分したいのにできないでいる」と語る。「事実上、塩漬け以外に選択肢がない。つまり、取引ができるようになった途端、売りがいつまでも続く可能性があるということだ」という。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

フィンランドも対人地雷禁止条約離脱へ、ロシアの脅威

ワールド

米USTR、インドの貿易障壁に懸念 輸入要件「煩雑

ワールド

米議会上院の調査小委員会、メタの中国市場参入問題を

ワールド

米関税措置、WTO協定との整合性に懸念=外務省幹部
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    トランプが再定義するアメリカの役割...米中ロ「三極…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中