最新記事

仮想通貨

ビットコインとイーサリアムは実際どれだけ「普及」したのか、データ分析の結果

2022年1月13日(木)18時00分
千野剛司(クラーケン・ジャパン代表)
世界に普及するビットコイン

imaginima-iStock

<感覚的にはビットコインなどを保有する人や企業の数は増えているように感じるが、実際にはどれほど変化しているのか。オンチェーン分析で計測する>

2021年、日本では暗号資産の盛り上がりはいまいちでしたが、世界ではプロの投資家や大手シリコンバレー企業の参入などが相次ぐなど、一気に普及が加速した年となりました。肌感覚としては、昨年暗号資産は世界的にさらに「普及」したと感じますが、実際のところどのくらい普及したのでしょうか?

そもそも暗号資産業界は、世界中に分散している個人やプロジェクトが自律的に機能しているという特性があり、データを中央集権的に管理する機関は存在しません。このためお手軽に「普及率」を示すことは容易くはありませんが、今回はクラーケン・インテリジェンスのオンチェーン分析を使って「普及率」の計測を試みます。

オンチェーン分析とは、アドレス数や取引量などブロックチェーンにおける取引記録を元に過去の傾向を分析して将来の動きを予測する手法です。今回は、ユーザー数や時価総額、長い歴史といった観点から最も成功している2つの暗号資産──ビットコインとイーサリアムを分析対象とします。

ライブアドレスと月間アクティブアドレス

まずはじめにビットコインとイーサリアムのライブアドレス(live addresses)と月間アクティブアドレス(monthly active addresses, MAA)をみてみましょう。

ライブアドレスについて、ここでは残高が0.001 BTC、0.01 BTC、0.1 ETH、0.01 ETH以上のユニークなアドレス数の合計と定義しました。月間アクティブアドレスは、過去30日間で送金など取引が行われたアドレスの総数です。

まず、0.001 BTCもしくは0.01ETH(約40ドル)より残高が大きなライブアドレスをみてみますと、過去5年間、右肩上がりの成長曲線を描いていることが分かります。2020年の夏ごろからとりわけイーサリアムの成長速度が加速し、2021年10月にビットコインを抜きました。

220113kra_ocj01.jpg

(出典: Kraken Intelligence, CoinMetrics「ビットインとイーサリアム 40ドル以上のライブアドレスと月間アクティブアドレス」)

しかし、この結果を額面通り受け止めてはいけません。「取引手数料」を考察する必要があります。というのも、もし残高より送金に必要な手数料が高ければ、資金を動かすことができず、そのアドレスは放置されるかもしれません。また、手数料が残高の50%を消費してしまうようなケースも同様です。「ライブアドレス」というオンチェーン指標は、ユーザーが放棄した可能性があるアドレスも「ライブ」とカウントしてしまうところに難点があります。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中