最新記事

自動車

テスラ、コロナ禍のサプライチェーン混乱でライバルを引き離した「秘密」とは

2022年1月8日(土)12時25分

ライト・テックのケビン・アンダーソン氏によると、一部の既存メーカーは、リスクを伴う半導体の修正や別の半導体工場の製品を使うことには慎重だ。「(既存メーカーの中には)こうした変更で意図せざる結果に見舞われ、多くの時間を費やした過去がある。テスラのような企業は、それほど長い経験を持っていない」と述べた。

垂直統合の進ちょく度

テスラは運転支援システム用の半導体も設計し、座席からバッテリーセルまでさまざまな部品を内製化している。独自の直営販売・サービス・充電施設網もある。

マスク氏は「われわれは車に関して、他のオリジナル製品メーカー(OEM)よりもずっと多くの部分を設計、製造している。彼らは総じて伝統的なサプライベース、私の呼び方ではカタログ・エンジニアリングに向かうので、とてつもなく大胆にはなれない」と指摘した。

セラフ・コンサルティングのアンブローズ・コンロイCEOは「テスラは他のメーカーが望めないほどの水準で車の製造工程をコントロールしている。ヘンリー・フォードが「T型」で最初に成し遂げた(垂直)統合に極めて近い」と述べた。

半導体確保の方法

2020年は多くの自動車メーカーが半導体の発注を削減した。新型コロナウイルスのパンデミックとロックダウン(都市封鎖)が需要に打撃を与えたからだ。

ただ、テスラは需要の急回復を想定し、サプライヤーと共有する生産見通しを決して下方修正せず、そのおかげで半導体不足の局面を乗り切れた、とテスラのカークホーン最高財務責任者(CFO)は語った。

テスラのあるサプライヤーの経営幹部は「余力を持つための在庫を確保するという面で、テスラは他の企業より賢明に振る舞い続けている」と評価している。

ライト・テックのアンダーソン氏は、既存メーカーが部品サプライヤーを間に挟んで半導体メーカーと取引しているのに対して、テスラは半導体サプライヤーと直接取引している分、より素早く動けたとの見方も示した。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・クジラは森林並みに大量の炭素を「除去」していた──米調査
・気候変動による世界初の飢饉が発生か 4年間降雨なく、昆虫で飢えをしのぎ...マダガスカル
・地球はこの20年で、薄暗い星になってきていた──太陽光の反射が低下


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア産肥料を米企業が積極購入、戦費調達に貢献と米

ビジネス

ECB、利下げごとにデータ蓄積必要 不確実性踏まえ

ビジネス

ソニー、米パラマウントに260億ドルで買収提案 ア

ビジネス

ドル/円、152円台に下落 週初から3%超の円高
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中