「ソニーEVは人が乗れる巨大aibo」 自動車の再定義に既存メーカーも注視
ソニーグループの電気自動車(EV)戦略が次第に明らかになってきた。写真は日本時間5日に米ラスベガスで公開した試作車「VISIONーS02」(2022年 ロイター/Steve Marcus)
ソニーグループの電気自動車(EV)戦略が次第に明らかになってきた。専門外である車両自体の開発・製造は他社と協業し、人工知能(AI)や半導体を使ったエレクトロニクスメーカーならではの自動運転技術で付加価値を高める。そこに映像などの自社ソフトや更新プログラムを流し、継続的に収益を得るというものだ。ソニーは犬型ロボットなどでも同様の事業構想を描いており、専門家の中にはソニーのEVを「巨大なaibo(アイボ)」と位置付ける向きもある。
独ボッシュなどが協力
ソニーによると、日本時間5日に米ラスベガスで披露したスポーツ多目的車(SUV)型試作車「VISIONーS02」の主要サプライヤーは、独自動車部品大手のロバート・ボッシュやコンチネンタル、独フォルクスワーゲン傘下の英ベントレー、米半導体大手のエヌビディアやクアルコムなど10数社。さらに、名前を伏せてプロジェクトへ参加している企業も複数あるという。
「ゼロツー(02)」と呼ばれるこの試作車は、ソニーが全体の仕様を決定。各部品メーカーから製品を取り寄せ、カナダの自動車部品大手マグナ・インターナショナル子会社のマグナ・シュタイヤーが組み立てを担った。
ソニーが直接手掛けたのは車内外にセンサーとして搭載するCMOSイメージセンサ―、コンソールの液晶パネル、車内外のデザインやインテリア、オーディオなど。どのメーカーの部品をどの程度使ったか、ソニーの部品がどのぐらい使われているかといった詳細は、一切公表していない。
登壇した吉田憲一郎会長は、「様々なパートナーから、モビリティについて多くのことを学んできた」と語った。自社が保有するセンサーなどの技術と、ゲームや映画といったコンテンツを組み合わせることで「ソニーはモビリティを再定義する、クリエイティブエンタテインメントカンパニーになれる」と宣言した。
狙いはEV本体にあらず
新たな試作車を披露しながら自動車そのものの技術には多く触れず、半導体を多用した安全性の確保、5G接続やデジタルビデオサービスといったコンテンツビジネスを語り続けた吉田会長。その姿から浮かび上がるのは、EV専業の米テスラを含め、車両の進化と量産に経営資源の多くを注ぐ既存の自動車メーカーとは異なる事業モデルだ。