通貨リラ暴落のトルコ インフレ直撃の庶民は安いパン求め市営売店に行列
トルコでは通貨リラの暴落とインフレの進行で国民の所得が目減りし、最大都市イスタンブールでは多くの市民が、わずかでも家計を節約しようと、市の提供する安いパンを買うために行列を作っている。写真は7日、イスタンブールのパン店に行列する市民(2021年 ロイター/Umit Bektas)
トルコでは通貨リラの暴落とインフレの進行で国民の所得が目減りし、最大都市イスタンブールでは多くの市民が、わずかでも家計を節約しようと、市の提供する安いパンを買うために行列を作っている。
長らく与党・公正発展党(AKP)の地盤となってきたイスタンブールのスルタンガジ地区では、数十人が市の運営する売店でパンを買おうと待っていた。経済的に苦しくなり、ここで買うほかないという。
家族のためにパンを買ったオズカン・ケスダさん(50)は「1リラ、5リラ、10リラ、20リラといちいち数えるほど追い詰められている」と話した。
苦境の責任は政府にあるとケスダさんは考える。「20年間同じ体制だったのだから、政権が交代しなければだめだ。この地区はほとんどの人が『皇帝万歳』と言うかもしれないが、そういう時代は終わった。私と同じようにAKPに投票した人たちも困っている」という。
ラマザン・カンベイさんは家計が急激に悪化した。これまでは1週間に1000リラでやりくりする生活で、そのうち半分が食費だった。リラ暴落で1000リラはドル換算ではわずか73ドル(約8300円)にしかならず、必需品すら賄えなくなった。
「週に1000リラじゃ足りない。これは誰のせいだ」とカンベイさん。
イスタンブールのエクレム・イマムオール市長は、市の売店にできる行列は経済的な危機のみならず、政治的変化が必要だということを示していると見ている。イマムオール氏はエルドアン大統領の敵対候補と目されている人物だ。
イスタンブール市営の売店で売られているパンは価格が1.25リラ(0.09ドル)と、普通のパン屋の半分程度。需要に応じるため、1日に焼き上げる数を約2倍の150万個程度に増やした。それでも行列はなくならず、この数でも足りないという。
イマムオール氏は市庁舎で行ったインタビューで、「貧困状態は明白だ。好きでパンを買いに並んでいるわけではない」と話した。