パナソニックが狙う、北米ソーラー事業の次の一手
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写真提供:Panasonic Corporation of North America
<太陽電池の生産を終了することを発表したパナソニック。高い信頼性を獲得していたアメリカでは、同社のソーラー事業の行く末に注目が集まっている。生産をOEM化するという戦略は何を意味しているのか>
2020年の三菱電機に続いて、パナソニックがマレーシア工場と島根工場における太陽電池の生産を2021年度中に終了する。その発表を受けて、早くもアメリカでは同社のソーラー事業の行く末に注目が集まっている。
太陽電池を生産しなくなるパナソニックは、どのような形でソーラー事業と関わっていくのだろうか。
無数のメーカーが乱立するアメリカの太陽電池市場で、HIT(ヘテロ接合型)と呼ばれる太陽電池の優れた機能性を生かし、2018年には住宅分野の太陽電池で12.2%のシェアを獲得。プレミアムブランドとしての地位を確立しているパナソニックが、そのアメリカ事業を丸ごと捨ててしまうとは思えない。
「2021年初めに、太陽電池の自社生産をやめ、OEMモデルに移行すると発表したが、それによって顧客やステークホルダーの間で混乱を招いてしまった」
同社の現地法人、パナソニック・ライフソリューションズ・カンパニー・オブ・アメリカのソーラーおよびストレージソリューションのディレクターであるムケシュ・セティ氏は、ソーラー業界の専門メディア『Solar Power World』でそう語った。「しかし、これは戦略の転換でしかない」
太陽電池については、自社工場を持たないファブレス企業のように、外部に生産を委託したものを自社ブランドで販売していく。そして、セティ氏が今後のビジョンとして提示したのは、ソリューションプロバイダーとしての姿だった。
アメリカでのHIT販売開始から5年で、次々と高い評価
もともとパナソニックのソーラー事業は、三洋電機が開発したヘテロ接合型太陽電池の「HIT」を2009年の買収によって譲り受ける形でスタートした。
住宅用の太陽電池として最も多く使われているシリコン系太陽電池の中でも、HITは歴史の長い単結晶シリコンや低コストで生産できる多結晶シリコンより変換効率が高く、高温時の出力低下も少ない特徴を持つ。つまり、当初から高品質を謳う高級ブランドとして販売していたのである。
アメリカでは2016年からHITの販売を開始。2019年からは、繰り返し充電して家庭内の電気機器に電気を供給する蓄電システムを導入し、創蓄エネルギーのブランド「EverVolt」をスタートさせた。
その結果、住宅用創蓄のプレミアムブランドとして認められ、2016年からのアメリカ市場で累計約8万軒相当の住宅に太陽電池を販売した。
実際、アメリカでその性能は高く評価されている。業界誌『GREEN BUILDER』は今年初め、「サステナビリティー・アワード2021」にHIT+N340太陽電池とEverVolt蓄電システムを選出。同誌はさらに3月にも、ウェブ版で発表した「2021年の傑出した5製品」の中に、この2製品を選んでいる。