いい文章を書くなら、絶対に避けるべき「としたもんだ表現」の悪癖
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<常套句は使わない。朝日新聞の名文記者が文章術のベストセラー『三行で撃つ』で指南する、自分だけの視点で文章を書く技術>
<記事前半:読む人の心を撃つ『うまい文章』を書くためのシンプルな三原則>
名文家として知られる朝日新聞・編集委員の近藤康太郎氏が書いた『三行で撃つ 〈善く、生きる〉ための文章塾』(CCCメディアハウス)が、プロ・アマを問わず、文章を書く人たちの心を捉えている。5月の文章講座には、ライターや記者を中心に約130名が参加し、時間すべてが質疑で終わるほど、多くの質問が寄せられた。
近藤氏は、朝日新聞紙面では、名物コラム「多事奏論」や、米作りや狩猟を通じて資本主義から現代社会までを考察する人気連載「アロハで猟師してみました」を担当している。多数の著書があり、音楽、文学、映画の評論でも活躍する。ジャンルやテーマを軽々と飛び越える。そして、書く。読者を楽しませることを決して忘れない。何を書いても、他にはない視点が必ずある。
いい文章を書くうえで必要なのは、文章技術だけではない。自分だけの視点、自分だけの感情、世界を切り取る技術、つまり何を書くかが問われる。近藤氏は若手の記者やライターに私塾で文章を教えてもいる。そこで最初に教えるのが、「常套句をなくせ」という技術だ。なぜか? 自分にしか書けない文章、個性的な文章に直結する技術だからである。
『三行で撃つ』から抜粋して紹介する後編は、「第4発 常套句・『としたもんだ表現』――親のかたきでござります。」をお届けする。
『三行で撃つ 〈善く、生きる〉ための文章塾』
近藤康太郎 著
CCCメディアハウス
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【Hop】■常套句――「目を輝かせ」「胸を張る」退屈な人たち
わが家に集まる塾生たちに、いちばん最初に教えるのは、「常套句をなくせ」ということです。
塾を卒業してデビューしていったフリーライターが述懐していたことですが、彼女はある日、いつものようにわたしに原稿を怒られ「常套句は親のかたきと、大きく紙に書いて、机の前に貼っておけ」と面罵(めんば)されたのだそうです。塾と言ってもほとんどは酒を飲みながらの宴会ですから、さては酔っていましたか。
常套句とは、定型、クリシェ、決まり文句です。
たとえば、秋の青空を「抜けるように青い空」とは、だれもが一回くらいは書きそうになる表現です。「燃えるような紅葉」などと、ついやらかしてしまいますね。