欧州の家庭をこの冬大幅な光熱費上昇が直撃 その背景を探る
ただバンク・オブ・アメリカのアナリストチームによると、ロシア国営ガス会社のガスプロムがこの冬、欧州に供給を拡大できる余地は限られる恐れもある。ロシア国内でのガス貯蔵をなお進めている上に、生産量が既に10年来の高水準に迫っているからだ。
先月にはノルウェーのエネルギー企業エクイノール[EQNR.OL]が、欧州向け天然ガス輸出を増やす方針を打ち出した。ノルウェーの欧州向けガス供給量はロシアに次ぐ規模。また英国のガス需要の3分の1弱も供給している。
小売価格が上がるわけ
多くのエネルギー供給企業は最近数カ月で小売料金引き上げを発表し、卸売価格の上昇コストを消費者に転嫁している。
卸売価格は小売料金の大半を占める。例えば英国で消費者が支払う電力・ガス料金のうち、卸売価格のコストは40%に達する。だから卸売価格が大きく上昇すると、供給企業は小売料金を引き上げる事態になり得る。
供給企業は卸売市場で、当日もしくは1日後、数カ月後、あるいは何シーズンも先の受け渡しとなるエネルギーを随時購入できる。その中で価格がいつ割安化するのかを予測し、需要に見合う適切な量を買わなければならない。もし十分な量を確保していなければ、比較的高値の局面で購入量を拡大せざるを得なくなるかもしれない。今年は夏の間ずっと価格が上がり続けていた。
市場に誰か介入が可能か
EU欧州委員会のシムソン委員(エネルギー担当)は、近くEUのガス市場の全面改革案を提示すると話している。
スペインが提案した1つの考えは、EUが4億5000万人の消費者を抱える単一市場としての購買力を生かし、共同でガスを調達して戦略的な備蓄を積み立てるという計画。ただ具体的な仕組みはほとんどが不明だ。
一部の欧州諸国は、この冬に家庭が強いられる負担を軽減するため、補助金や価格上限制、エネルギー企業に対する消費者への利益還元要求といった対策を既に講じている。