最新記事

エネルギー

欧州の家庭をこの冬大幅な光熱費上昇が直撃 その背景を探る

2021年10月11日(月)16時11分

暖房燃料をガスに依存している英国の場合、2019年に標準的な電力・ガス料金に上限を設ける措置を導入。当時のメイ首相が「ぼったくり」と呼んだ法外な値上げを阻止するのが狙いだった。

もっとも英ガス電力市場監督局(Ofgem)は、家庭向けの最も標準的なエネルギー料金の上限を今月から12-13%引き上げると発表。8日には、来年4月にもまた上限が「相当程度」上がるとの見通しを示した。

英国では、エネルギー供給企業を支えるための「受け皿銀行」創設や公的融資、家庭の負担を減らすための特別な税制といった形の政府介入も提案されている。ただムーディーズ・インベスターズ・サービスは、これらの提案がどのように実行されるか、そして業界にどう影響するかは不透明だとくぎを刺した。

消費者にできること

英国ではエネルギー市場が自由化されてきたため、消費者にとって供給会社の選択肢の豊富さは世界屈指だ。その半面、現在40社前後がひしめく市場で、より小規模な企業は価格高騰に応じて卸売市場を通じて購入した電力をヘッジするための資金が少ない。合計で市場の6%、170万人強の顧客にサービスを提供している9社は9月初め以降、取引を中止している。

消費者は普段であれば、より料金が安い供給企業へ自由に乗り換えることができる。だが消費者団体によると、小規模企業が破綻し、割安な契約を利用できなくなっている以上、上限制度の対象となる標準的な料金が今は最低水準の部類になった。

Ofgemなどの規制当局は消費者に対して、もしも料金支払いに苦しんでいるなら、供給会社に連絡していつどのぐらい払えるかを伝えるよう促している。

より性能の良い断熱材やエネルギー効率の高い照明器具、スマートメーターといった省エネ手段の活用も推奨されているものの、初期投資費用がかかってしまう。むしろ夏場にエネルギー消費自体を減らす方がずっと安上がりだ。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・誤って1日に2度ワクチンを打たれた男性が危篤状態に
・新型コロナ感染で「軽症で済む人」「重症化する人」分けるカギは?
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

独IFO業況指数、12月は予想外に低下 来年前半も

ビジネス

EU、炭素国境調整措置を強化へ 草案を正式発表

ワールド

インドネシア中銀、3会合連続金利据え置き ルピア支

ワールド

戦略的互恵関係を推進、国会発言は粘り強く説明=日中
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 7
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 8
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 9
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中