最新記事

エネルギー

欧州の家庭をこの冬大幅な光熱費上昇が直撃 その背景を探る

2021年10月11日(月)16時11分
スペイン・バルセロナにあるアパートの電気メーター

世界的に電力と天然ガスの卸売価格が跳ね上がった影響で、欧州全土の家庭はこの冬、エネルギー料金の大幅な上昇に直面する。消費者団体は、域内で最も生活基盤が脆弱な人々は燃料不足に見舞われかねないと警告している。写真はスペイン・バルセロナにあるアパートの電気メーター、2017年1月撮影(2021年 ロイター/Albert Gea)

世界的に電力と天然ガスの卸売価格が跳ね上がった影響で、欧州全土の家庭はこの冬、エネルギー料金の大幅な上昇に直面する。消費者団体は、域内で最も生活基盤が脆弱な人々は燃料不足に見舞われかねないと警告している。

価格高騰の理由

エネルギー供給企業は卸売価格で電力とガスを購入し、消費者に小売りしている。どの市場でも同じだが、価格は需要と供給次第で上下に動く。冬場は、暖房需要が高まり、照明機器も早い時間からつけるので、価格は上がる傾向がある。逆に夏は価格が下がりやすい。

ただ今年の場合、ガス在庫の少なさや、欧州連合(EU)の排出枠の高値推移、アジアからの引き合いの強まりに伴い液化天然ガス(LNG)タンカーの輸送量が低水準になっていること、ロシアからのガス供給が通常より細っていること、再生可能エネルギーによる発電量の低迷、インフラの稼働休止といったさまざまな要因が重なり、価格がうなぎ上りになっている。

欧州の天然ガス卸売市場の指標であるTTF先物価格は1月以降の上昇率が400%を超え、ドイツとフランスの標準的な電力料金は2倍以上に上がった。

いつまで続くか

欧州の暖房需要期は通常10月に始まる。一部のサプライヤーがより多くのガスを届けると約束しているが、卸売価格は年内を通じて大きく下がるとは予想されていない。多くのアナリストは、来年も高止まりが続くと想定している。

最大の欧州向けガス供給者であるロシアはこのほど、同国とドイツを結ぶ海底ガスパイプライン「ノルドストリーム2」が承認されれば、欧州のガス価格高騰に歯止めがかかってもおかしくないとの見方を示した。

ノルドストリーム2はドイツの規制当局が承認する見通し。9月に承認手続きは4カ月かかる可能性があると表明した同当局は、近くノルドストリーム2が稼働できる展開を否定せず、技術的な要求水準は全て満たされていると付け加えた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

岸田首相、「グローバルサウスと連携」 外遊の成果強

ビジネス

アングル:閑古鳥鳴く香港の商店、観光客減と本土への

ビジネス

アングル:中国減速、高級大手は内製化 岐路に立つイ

ワールド

米、原発燃料で「脱ロシア依存」 国内生産体制整備へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を受け、炎上・爆発するロシア軍T-90M戦車...映像を公開

  • 4

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 5

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 10

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 7

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中