欧州の家庭をこの冬大幅な光熱費上昇が直撃 その背景を探る
世界的に電力と天然ガスの卸売価格が跳ね上がった影響で、欧州全土の家庭はこの冬、エネルギー料金の大幅な上昇に直面する。消費者団体は、域内で最も生活基盤が脆弱な人々は燃料不足に見舞われかねないと警告している。写真はスペイン・バルセロナにあるアパートの電気メーター、2017年1月撮影(2021年 ロイター/Albert Gea)
世界的に電力と天然ガスの卸売価格が跳ね上がった影響で、欧州全土の家庭はこの冬、エネルギー料金の大幅な上昇に直面する。消費者団体は、域内で最も生活基盤が脆弱な人々は燃料不足に見舞われかねないと警告している。
価格高騰の理由
エネルギー供給企業は卸売価格で電力とガスを購入し、消費者に小売りしている。どの市場でも同じだが、価格は需要と供給次第で上下に動く。冬場は、暖房需要が高まり、照明機器も早い時間からつけるので、価格は上がる傾向がある。逆に夏は価格が下がりやすい。
ただ今年の場合、ガス在庫の少なさや、欧州連合(EU)の排出枠の高値推移、アジアからの引き合いの強まりに伴い液化天然ガス(LNG)タンカーの輸送量が低水準になっていること、ロシアからのガス供給が通常より細っていること、再生可能エネルギーによる発電量の低迷、インフラの稼働休止といったさまざまな要因が重なり、価格がうなぎ上りになっている。
欧州の天然ガス卸売市場の指標であるTTF先物価格は1月以降の上昇率が400%を超え、ドイツとフランスの標準的な電力料金は2倍以上に上がった。
いつまで続くか
欧州の暖房需要期は通常10月に始まる。一部のサプライヤーがより多くのガスを届けると約束しているが、卸売価格は年内を通じて大きく下がるとは予想されていない。多くのアナリストは、来年も高止まりが続くと想定している。
最大の欧州向けガス供給者であるロシアはこのほど、同国とドイツを結ぶ海底ガスパイプライン「ノルドストリーム2」が承認されれば、欧州のガス価格高騰に歯止めがかかってもおかしくないとの見方を示した。
ノルドストリーム2はドイツの規制当局が承認する見通し。9月に承認手続きは4カ月かかる可能性があると表明した同当局は、近くノルドストリーム2が稼働できる展開を否定せず、技術的な要求水準は全て満たされていると付け加えた。