このアイスが64円! 10期連続売上増シャトレーゼが「おいしくて安い」理由
業績が好調にもかかわらず、シャトレーゼが株式上場をしない理由は、この社是にあると齊藤氏は言う。上場すると、株価を上げたり、配当を増やしたりすることを考えなければいけなくなる。「お客様」よりも株主が一番になってしまうことを懸念した。
現在、シャトレーゼの集客力が注目され、出店のオファーや業態転換の相談が相次いでいるという。しかし、齊藤氏は、ただ店舗数を増やせばいいわけではないと考えている。最も大切な加盟条件は、「利他の心」を持っていることであり、「三喜経営」に心から賛同していることだという。
「おいしくて安い」を実現したファームファクトリー
シャトレーゼが目指しているのは、「おいしくて安い」である。
安い材料を使って値段を落としたり、おいしさよりも保存がきくことを優先したりするのは、作り手や売り手の都合だ。それ以外のところで工夫をするのがシャトレーゼの方針である。齊藤氏は、常に「お客様の目線」で事業を見ているのだ。
コストを抑える方法として行ったのが、製造工程の機械化だった。それにより、人件費が抑えられる。さらに手で触れる作業が減るため、菌の繁殖を防ぐというメリットも生まれた。
また、工場直営の店舗展開をすることにより、問屋や小売店の中間マージンがなくなった。それらを価格に反映することができ、安さが実現する。
シャトレーゼは、「ファームファクトリー」と呼ぶシステムを採用している。必要な素材を農場・農園から直接仕入れて工場に送ることで、新鮮な状態でお菓子にできるというもの。これこそ同社のおいしさへのこだわりの象徴だ。
1994年、この「ファームファクトリー」構想は、名水で知られる山梨県の白州に工場を建てたときに打ち出された。水は素材を生かすために大切という考えから、白州を選んだという。水は原材料欄には記載されないが、すべての商品に関わる大切な原材料のひとつだ。
乾燥した小豆はたくさんの水を吸うため、あんこを作るときは、洗うときから白州の水を使う。中道工場や豊富工場でも、使っているのは白州の水だ。水をタンクローリーで運ぶコストは、年間数千万円単位になるという。
また、洋菓子作りに欠かせない卵にもこだわりがある。
代表取締役社長の古屋勇治氏によると、規模が大きい菓子製造会社では、一般的に「液卵」という割って混ぜてある状態の卵を仕入れるという。
シャトレーゼも当初は液卵を購入していた。しかし、割ってから時間が経った卵は、スポンジのふくらみが弱くなるため、卵液によって出来栄えにバラつきが出てしまう。そのバラつきを補うのが、膨張剤などの添加物だ。