自動運転車の最新装備は「人」 スタートアップ各社が妥協路線を選択
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米ゼネラル・モーターズ(GM)の子会社であるクルーズや、 中国新興企業の小馬智行(ポニー・エーアイ)をはじめとする自動運転スタートアップは、昨年からカリフォルニア州のいくつかの地域で自動運転車のテストを始めている。写真はポニー・エーアイの自動運転技術を搭載した自動車の車内。カリフォルニア州フリーモントで6月撮影(2021年 ロイター/Nathan Frandino)
米ゼネラル・モーターズ(GM)の子会社であるクルーズや、 中国新興企業の小馬智行(ポニー・エーアイ)をはじめとする自動運転スタートアップは、昨年からカリフォルニア州のいくつかの地域で自動運転車のテストを始めている。
それらには新たに付け加えられた「機能」がある。人間のオペレーターだ。
運転席にドライバーこそいないが、助手席には安全オペレーターが座る。「何かあれば、赤いボタンを押して車を停止できる」と、ポニー・エーアイのジェームズ・ペン最高経営責任者(CEO)はロイターに語った。
トヨタ自動車などが出資するポニー・エーアイは来年、カリフォルニア州の一部で自動運転配車サービスを展開する予定で、その際にはオペレーターは同乗しない予定だ。それでも、遠隔オペレーターが車を監視し、車がトラブルに陥ったときに指示を与えるようにする、とペンCEOは言う。
アルファベット傘下のウェイモは、アリゾナ州フェニックスで提供する自動運転ミニバンの支援用に、蛍光イエローのベストを着た係員を現場に配置している。
クルーズは2020年10月、サンフランシスコで5台の自動運転車の夜間運用を開始したが、やはりフロントシートに人間を乗せている。クルーズの広報担当者によれば、この「お目付役」は「自動運転中、いつでも車を停止できる」という。
「クルーズでは、自動運転車の開発は、単なる技術競争ではなく『信用』の競争でもある、と考えている」とこの広報担当者は説明。「そうした観点から、自動運転車の実験工程から人間を省くことはない。安全な開発のためだけではなく、それ以上に、社会との信頼関係を築いていくためだ」
韓国の現代自動車グループは、遠隔操作関連スタートアップのオットピアに出資している。オットピアは、現代自動車の自動運転合弁事業モーショナルが運用する「ロボタクシー」事業向けに遠隔支援技術を提供する予定だ。
テスラも要求
自動運転車はソフトウェアが自動で運転してくれるはずだったのに、人間の介在が続いている──。この事実は、過去10年にわたり投資家の資金を何十億ドルも費やしてきた自動運転産業が今なお抱えている課題を浮き彫りにする。
走行範囲を限定しない運転手不在の「ロボタクシー」は、技術上・規制上の障害がいくつもあり実現のメドが立たない。そこで一部の自動運転企業では、近い将来に収益を計上できるよう、人間のお目付役の必要性を受け入れ、野心的な計画を縮小しつつあることが、投資家やスタートアップ幹部たちへのインタビューで明らかになった。
最近、「完全自動運転」をうたうソフトウェアの新しいテストバージョンを発表したばかりのテスラも例外ではない。同社は、テスラ車のドライバーは「特に先が見えにくい曲がり角や交差点の通過時、余裕のない交通状況の場合には、即座に操作できるよう備えておく」べきだと述べている。米国の安全規制当局は、一連の死亡事故の発生を受けて、テスラの運転支援システム「オートパイロット」に関する正式の調査を開始したところだ。
ウェイモの現場アシスタンス
ウェイモは10年以上にわたって自動運転技術の開発を行ってきており、2018年にはフェニックスで初の実用「ロボタクシー」を発表した。だが、グーグルによる先駆的な自動運転車プロジェクトを継承したウェイモは、いまだに人間を制御の中に介在させている。