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日本は「北朝鮮より下の最下位」という不都合な真実 なぜ日本は対内直接投資が低いのか

2021年8月10日(火)08時57分
リチャード・カッツ : 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク) *東洋経済オンラインからの転載

2013年から2020年、OECDによるとFDIのストックは6兆円しか増えていないが、財務省は3倍の20兆円の増加と報告。これにより日本政府は、安倍氏が設定したFDIの倍増を達成し、2020年に約40兆円となったと喧伝することができた。グローバルスタンダードとなる数値の計上では、それにはほど遠い24兆円だった。

財務省の使用する数値は一定の正当な会計目的があるが、例えば、海外関連会社から日本の親会社への貸付金など、実質的な直接投資と関係のない項目も含んでいる。

したがって、OECDの広報担当者が東洋経済の取材に対し、「(グローバルスタンダードである)directional principalのほうがFDIの経済的影響の分析に適している。国と産業ごとの直接投資の統計の推奨的な提示法だ」と言ったのもうなずける。問題を解決する第一歩が、問題があることを認識することならば、日本政府は困難に直面している。

他国ではFDIは跳ね上がっている

FDIに対して抵抗から歓迎へと転換した他国では、FDIは急上昇している。では、なぜ日本の努力は報われていないのか。たとえば韓国では、外国直接投資のGDP比は、1998~99年のアジア通貨危機以前の2%から、現在、14%へと跳ね上がった。インドでは、1990年はわずか0.5%だったが、現在14%へと上昇し。東欧では共産主義崩壊後、7%からなんと55%へと大幅にアップした。

内閣府の対日直接投資推進会議は、6月の声明に、日本の最大の問題は外国企業に魅力をアピールできていないことかもしれないと記した。したがって、ほぼすべての提言が「魅力的なビジネス環境」の構築を目的としている。しかし、この前提は正確ではない。

多数の調査によると、外国や多国籍企業は投資先のトップとして日本を挙げている。日本には大規模で豊かな市場、教育水準が非常に高い労働力と顧客基盤、高水準の技術、優れたインフラ、安定した政治経済システムがある。実際、アメリカの経営コンサルティング会社A.T. カーニーが世界の上級管理者を対象に実施した2020年の「海外直接投資信頼度指数調査」では、日本は富裕国27カ国中4位に入った。

経済学者である星岳雄氏と清田耕造氏の計算によると、日本が類似した特性を持つ他国と同様の経済活動を行えば、GDPにおけるFDIの比率はすでに39%という驚異的な数値に達していたようだ。

日本ではM&Aのハードルが高い

それでは、日本のこの悲惨な結果の原因はどこにあるのか? 主な要因は、固定した労働力、顧客基盤、ブランド名、サプライヤーなどを獲得するために健全な企業を買収するという、FDIの第一段階の実行が非常に困難である点だ。

典型的な富裕国では、FDIの80%が企業の買収・合併(インバウンドM&A)に割かれているが、日本ではわずか14%に過ぎない。これは主にインバウンドM&Aの規模が非常に小さいため、FDIの総額も非常に低くなっているのである。

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