ワクチン休暇は有給か、無給か? 中小企業が導入する場合は...
また、就業規則がない会社の場合は、この機に作成や届け出も検討する必要があるでしょう。法律の専門家に相談しながらの対応が効率良く制度導入に踏み切ることができる可能性もありますので、検討する方法も有効です。
実際に導入する際の手順と注意点
実際にワクチン休暇を導入する場合、主に次のような手順で行うと良いでしょう。
(1)ワクチン休暇日の扱い
ワクチン休暇日の扱いとして考えられる方法は、主に以下の3種類に分類されます。企業にとって最適な対応策を検討しましょう。
・特別休暇とする
特別休暇を有給とするか無給とするかについては前述の通り企業の自由ですが、スムーズに社内のワクチン接種者を増やしていくためには、無給で設定すると社員の反発をかう可能性があります。有給で対応する方法を取ることで、無用なトラブルを防ぐ効果があるでしょう。
・有給休暇とする
有給休暇は法律で義務づけられている休暇ですが、本来の目的は社員がリフレッシュをすることで、また新たな気持ちで仕事に向かうことができるように取得してもらう休暇です。
ワクチン接種は社員の健康や安全を考えた対応であるとはいえるものの、本来ならば自由に取得できるはずの有給休暇の一部をワクチン接種に充てると決める際には、社員を納得させるだけの理由が求められるケースもみられます。有給休暇を活用する場合は、入念に制度導入までの準備を行う必要があることが予想されます。
・無給休暇とする
無給休暇とする場合、その日は欠勤日となり、当然ながら給与額の控除対象となります。有給休暇の設定時以上に社員からの反響があると思われますので、トラブルを防ぐためには別途手当を支給するなど、社員が働き続けるにあたり不利益をこうむらない方法を検討する必要があります。
(2)申請の流れを決める
ワクチン休暇日の扱いが定まったところで、次は申請手続きの内容を決定します。どの社員がいつ休暇日を取得したのかが判断できるよう、事前にワクチン休暇取得の申請書を提出してもらう方法が良いでしょう。
気をつける点としては、ワクチン接種は現時点(2021年6月)では国民の義務ではないため、接種の強要や本当に接種したかどうかが判断できる証明書類の提出を求める方法は避けた方が良いでしょう。強要することで社員が不満を抱き、無用なもめごとへとつながる危険性があるためです。
ワクチン接種済みの人数は、地域によって差はあれども徐々に増加しています。今後も定期的に接種が必要となる可能性に備え、社員の身を守るため、またワクチン接種に関する社員の意識を高めるためにも、会社に合った方法でワクチン休暇を導入する方法が有効となるでしょう。
【参考】
※報道資料(2021年6月7日) - 東京都産業労働局
2021.06.22
[執筆者]
加藤知美
エスプリーメ社労士事務所 社会保険労務士
愛知県社会保険労務士会所属。総合商社、会計事務所、社労士事務所の勤務経験を経て、2014年に個人事務所を設立。総合商社時では秘書・経理・総務が一体化した管理部署で指揮を執り、人事部と連携した数々の社員面接にも同席。会計事務所、社労士事務所勤務では顧問先の労務管理に加えセミナー講師としても活動。現在は文章能力を活かしたオリジナルの就業規則・広報誌作成事業の2本柱を掲げ、専門知識を分かりやすく伝えることをモットーに企業の支援に取り組んでいる。