タイ、自動車輸出急増で過去最高額へ コロナ禍で打撃の観光業を補完
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タイの自動車輸出額が今年、過去最高を記録する勢いだ。写真はバンコク東部の自動車工場で2012年11月撮影(2021年 ロイター/Chaiwat Subprasom)
タイの自動車輸出額が今年、過去最高を記録する勢いだ。コロナ禍で停滞した世界の経済活動が再開に向かっているためで、主力産業の観光業が外国客の落ち込みで苦闘するタイにとって、救世主になっている。
タイはアジア第2の観光大国。しかし、同国の有名な海岸や露天市や仏塔は世界各地の観光業の例にもれず、コロナ感染対策の規制でこの1年、干上がった状態だ。
タイ中央銀行は既に、今年の経済成長率予測を個人消費と観光業の点から下方修正している。ところが先週には来年の輸出見通しを引き上げ、11年ぶりの高い伸びとなる17.1%とした。3月時点では10%と見込んでいた。
通関統計によると、輸出の伸びの大半は自動車とその部品や付属品。この分野の輸出額は5月、前年同月比170%と8年超ぶりの急増となった。タイでは最大の輸出部門だ。
ジュリン商務相は今月、記者団に「輸出は今や、我が国の経済の主力エンジンだ」と語り、一方で観光業がなお立ち直れていないことも認めた。
タイの自動車の組み立てと輸出の拠点は世界最大の自動車メーカーにとってはアジア4位の規模。進出しているのはトヨタ自動車やホンダといった大手だ。同国の国内総生産(GDP)で自動車産業は約10%を占め、製造業雇用では10%を創出。コロナ禍の影響はあったものの、観光業に比べ、ずばぬけた速さで立ち直ることができてきた。
同国のAAPICOハイテックは4500人を雇用する自動車部品メーカー。Yeap Swee Chuan社長はロイターに、今は24時間態勢でフル稼働していると語った。コロナ禍の打撃を受けた昨年とは大違いで、「昨年は絶不調だったが、今年は雲が晴れたのは間違いない」と指摘。今年の売上高の伸び目標は20%、利益目標はこれを上回る伸び率としている。「タイの(コロナなどの)状況が何であれ、今はまだ経済全体にそれほど影響していない。輸出市場が好調だからだ」と指摘した。
輸出が引っ張る自動車好況
タイには今年4月以降、同国最大のコロナ流行感染が到来し、国内の経済活動は抑制された。ところが国内の自動車販売への影響が限定的だったばかりか、海外からの需要がけん引役となって自動車産業は好況に沸いている。
タイ工業連盟(FTI)によると、今年の完成車の輸出台数は80万-85万台に達する可能性がある。目標の75万台を超える計算だ。昨年実績は73万6000台。FTI自動車部門の広報担当者は、全体の自動車輸出金額が今年は過去最多の1兆バーツ(314億ドル)と、コロナ禍前の2019年の7860億バーツを大きく上回るとみる。