最新記事

自動車

インド自動車マーケット、コロナ禍で色あせた外国メーカーの成長期待

2021年6月27日(日)13時37分
ムンバイの交通渋滞

外国の主要自動車メーカーがインド市場に対して持っていた成長期待が、急速に色あせつつある。ムンバイで2019年8月撮影(2021年 ロイター/Francis Mascarenhas)

外国の主要自動車メーカーがインド市場に対して持っていた成長期待が、急速に色あせつつある。インド国内で新型コロナウイルス感染第2波が猛威を振るい、政府が追加経済対策を打ち出す余地も限られ、回復が中国や米国から大きく後れを取る可能性があるためだ。

昨年、10年近く続いた販売台数の伸びが消失する事態に直面した各メーカーは、今年こそ需要が持ち直すと見込んでいる。しかしその動きを主導するのは外国勢が市場を牛耳る高級車ではなく、マルチ・スズキやライバルの現代自動車など小型で手ごろな価格の車種になる公算が大きい、と業界幹部やアナリストは話す。

フォード、ホンダ、日産、フォルクスワーゲン(VW)とその傘下のシュコダなど外国勢は、インド工場の稼働率と販売が当初の見通しを大幅に下回っており、将来の投資について厳しい判断を迫られている。

ある西側メーカーの幹部は「生き残りが掛かっている。インドにとどまるかどうかは、他の海外市場の費用便益分析次第だ」と述べ、見通しが好転しなければインド進出のメーカーの数が減少するとの見方を示した。

既にゼネラル・モーターズ(GM)とハーレー・ダビッドソンは昨年、インド市場から撤退した。

フォード・インディアのマネジングディレクター、アヌラグ・メフロトラ氏は「インドは自動車産業と経済の長期的な成長見通しが不透明で、その結果、設備稼働率などに深刻な問題が生じている」と述べた。

メフロトラ氏は、新型コロナのパンデミックで「素早い対応と難しい判断」が求められると断りつつ、フォードは既に取り組みを表明したインドの新プランの詳細は明らかにしていない。

VWは2018年にインド戦略を見直し、シュコダを軸に展開することを決定。2025年までに5%のシェアを握るために12億ドル(約1300億円)を投資する計画に変わりはないとしており、手始めに年内にスポーツタイプ多目的車(SUV)2車種を投入する。

現地法人シュコダ・オート・フォルクスワーゲン・インディアの広報担当は、インド市場でグループの地位を確立し、強化し続けるのが目標だと述べた。

ホンダと日産は電子メールでコメントを求めたが応じなかった。

遅れる回復

インドは10年前には、13億人の人口を抱える市場が成熟し、2020年までに米国と中国に次ぐ世界第3位の自動車市場に成長するとの見方が広がっていた。

しかし実際には、数年前に大型乗用車とSUVへの課税が強化され、相対的に外国メーカーが大きな打撃を被ったほか、19年の景気減速やパンデミックが重なり、世界での順位は5位に甘んじている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ショルツ独首相、2期目出馬へ ピストリウス国防相が

ワールド

米共和強硬派ゲーツ氏、司法長官の指名辞退 買春疑惑

ビジネス

車載電池のスウェーデン・ノースボルト、米で破産申請

ビジネス

自動車大手、トランプ氏にEV税控除維持と自動運転促
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中