インド自動車マーケット、コロナ禍で色あせた外国メーカーの成長期待
コンサルタント会社JATOダイナミクスのラビ・ブハティア氏によると、インド消費者の購買力は依然として西側諸国に比べてはるかに低く、自動車の加重平均価格は米国の3万8000ドルに対してわずか1万ドルにすぎない。
もちろんアナリストが指摘するように、人口1000人当たりの自動車保有が27台程度にとどまるインドは、長期的な潜在成長力を秘めていることに変わりはない。
コンサルタント会社LMCオートモーティブは、昨年235万台とほぼ10年ぶりの水準に落ち込んだインドの自動車販売台数が今年は前年比35%増の317万台に回復すると見込んでいる。
しかし、この数字は世界トップクラスの市場に比べるとかなり見劣りする。LMCの予想では、中国の今年の販売台数は7%増の2200万台、米国は21%増の1350万台に達するという。
中国と米国はいずれもパンデミックが過去の話になったのに対して、インドはまだ感染第2波からの回復途上で、ワクチン接種を完全に終えた人も成人全体の5%程度しかいない。
インドは財政に過剰な圧力が掛かっており、投資適格級の格付けを失う恐れもある。そのため米国や中国は追加経済対策が自動車市場の回復を支えるのと異なり、インドでは追加対策の余地は限られる。
さまざまなハードル
インド市場の見通しが厳しくなった時期と、外国メーカーがより成熟した、利益率の高い市場で電気自動車(EV)や新技術への投資を迫られているタイミングも重なった。
インド自動車工業会(SIAM)によると、フォード、ホンダ、シュコダ・VWは3月31日までの年度に国内販売台数が20-28%減少した。これはマルチ・スズキや現代の2倍以上の落ち込みだ。
またSAIMのデータに基づくと、一部外国メーカーの工場は設備稼働率が30%を割り込んでおり、メーカーの当初目標とはかけ離れた数字になっている。
日産はインドの自動車市場でのシェアを2020年までに5%とする目標を立てていたが、実際には1%以下。ホンダは18年のロイターの取材で、主要なプレーヤーになると明言してそのためには10%のシェアが必要だと説明していたが、シェアは当時の5%から3%に下がり、国内2カ所の工場の1つを閉鎖した。
インドに20億ドル余りを投資したフォードはシェアが2%弱にとどまっている。
LMCのアマール・マスター氏によると、地元メーカーと張り合うには新商品を安定的に投入することが欠かせず、そのために投資を増やす必要がある。
マスター氏は「品揃えの更新が遅れている自動車メーカーは激しい競争に直面し、販売やシェアが落ち込むリスクがより大きくなる」と指摘。フォード、日産、ホンダなどは今のところ次世代の強力な商品が見当たらないと付け加えた。
2人の業界幹部の話では、インドでは輸出政策に透明性を欠いていることや他の規制面のハードルのせいで外国メーカーにとって問題がより複雑になっている。
インドは昨年、フォードやVWなどインド国内での販売よりも輸出が多いメーカーにとって重要な輸出促進策を撤廃。今も新たな制度がまとまっていない。
輸出国はインドとの間で自由貿易協定(FTA)が存在せず、タイやベトナムなどFTAがある国と比べてコスト面で不利にもなる、と業界幹部は解説する。
フォード・インディアの元役員のビナイ・ピパルサニア氏は、「インドは、外国自動車メーカーの規模や投資の拡大を阻むリスクを打ち消す必要がある」と訴えた。
(Aditi Shah記者)
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