テスラの高性能EVが100万円代、中国からは50万円を切る小型EV... 日本車が迎える「黒船」の脅威
テスラはこれまでは高級路線で、モデルSにしても性能はすごいけれども、お財布には優しくない車でした。しかしEVが「お金持ちのおもちゃ」だった時代はもう終わりました。生活者の視野に入る価格帯で魅力的なEVが日本に入ってきたとき、それが「黒船」になる。そう、僕は思っています。
もちろんEVは現状で、すべての人にお勧めできる車ではありません。日本の貧弱な充電環境が足かせとしてついて回るからです。
しかし自宅に200ボルトの充電設備を置ける人や、EV用の充電インフラが生活圏内にある人は、これまでガソリン車に乗っていたとしても、新型テスラの車としての本質的な良さに惹かれ、なびく人が大勢出てくるでしょう。
このままでは日本の電気自動車市場を牛耳られてしまう。そういう危機感を今僕は、誰よりも強く持っています。安くて高性能なEVが入ってくるのは、ユーザーにとっては歓迎すべきことです。しかしそれによってトヨタやホンダのように日本を代表する企業が傾いてしまえば、その影響は日本経済全体、ひいては全日本人の生活に及んできます。
日本メーカーとは生産方式が全く違う
「航続距離400キロで実売200万円以下の電気自動車」というと、「そんな車作れるのか」と言う人がいるかもしれませんが、テスラならできるでしょう。テスラは「いい」と思ったものは先入観なくすべて取り入れていく、究極の合理主義体質の企業です。彼らは車の設計思想だけでなく、生産方法においても大きなイノベーションを起こそうとしています。例えば「インゴット生産」大型アルミ鋳造生産によるのもそのひとつです。
一般的な車のフレームは何十枚もの鉄板をプレス成形し、それを溶接で貼り合わせて作られています。ところがテスラでは、米宇宙企業のスペースX社でも使われている特殊なアルミニウムを金型に流し込んで、一気に成形してしまうのです。生産効率が飛躍的に上がり、コストも重量も大きく削減できます。
すでにテスラのSUV「モデルY」を生産するカリフォルニアのフリーモント工場やモデル3を生産する中国の上海工場ではアルミ鋳造生産の領域を増やす動きがでていますし、今年稼働開始予定のベルリン工場では100%アルミ鋳造生産でスタートするようです。このような製造上の革新も使い、新型コンパクトモデルは高性能と破壊的な価格を武器に日本にも上陸してくるはずです。
サプライヤーでは進化についていけない
これまで自動車業界では、ドイツがやっているような「自動車メーカーがスペシャルなサプライヤーと組んで開発を進める」という体制がベストではないかと言われていました。しかしテスラは今、さまざまなパーツをどんどん自社製に変えています。
2012年に発売されたモデルSには、運転支援用に米半導体大手NVIDIA(エヌビディア)のAIチップが入っていましたが、今は自社開発のAIチップを載せています。