テスラの高性能EVが100万円代、中国からは50万円を切る小型EV... 日本車が迎える「黒船」の脅威
広告費ゼロ、「車が良ければ自然に売れる」というスタンスで進化を続けるテスラは日本車メーカーの脅威に AdrianHancu-iStock
自動車は日本の基幹産業だ。しかし「EV(電気自動車)シフト」で、その勢力図が一変しつつある。モータージャーナリストの五味康隆氏は「これまでEVは『お金持ちのおもちゃ』だったが、急速に価格が下がっている。このままだと海外の高性能な格安EVに、日本車が対抗できなくなる恐れがある」という──。
テスラ新型は序の口にすぎない
最近、僕はテスラの新型車「モデル3」を試乗しました。モデル3、特に上海工場で製造されたモデル3はボディの剛性が高く、動力性能の高さ、高速走行での安定性、操縦性のよさなど、商品として完全に「ものになっている車」です。
充電1回あたりの航続距離は、エントリーグレードの「スタンダードレンジ」でも448km(WLTP)あり、その販売価格は434万円(6月4日時点)。今は「令和2年度第3次補正予算」で補助金が増額され、モデル3であれば80万円の補助金がつくので、実売価格は354万円と、一般の人にも手が届く範囲となっています。
テスラ独自の運転支援機能はすばらしく、日本では高速道路でしか使えませんが、ドライバーがほとんど何もしなくても勝手に走ってくれるレベル。カメラとセンサーも優秀で、人が路上に出てきたり横に車が並んできたりすれば検知し、信号はもちろん道路脇にあるパイロンまで読み取って、車内のモニターに表示します。
モデル3は「ワンペダルドライブ」もできます。ワンペダルドライブとは、ブレーキを踏まずにアクセルワークだけで運転すること。モデル3の場合、アクセルから足を離すだけで、ブレーキを踏まなくても完全停止まで減速していきます。強いブレーキや緊急ブレーキ以外、もうブレーキペダルを踏まないというドライブ方式です。
この価格に対して驚くべき性能ですが、これはまだ序の口。これから数年後に日本の自動車業界はいよいよ「黒船の来航」を迎えることになると、僕は予想しています。
200万円を切る高性能EVがやってくる
2020年9月、テスラのCEOイーロン・マスクは、「自動運転機能を搭載し、価格を2万5000ドル(1ドル=110円として275万円)に抑えた新型EVを2023年までに市場に投入する」と宣言しています。
新型車の仕様を推測すると、恐らく製造場所は輸送コストを抑えられる上海。ボディタイプはファミリー使用からパーソナル使用まで想定したハッチバックが有力。バッテリーはモデル3やモデル3ベースのSUVモデルYのものと同規格。航続距離は400キロを超え、乗り心地もモデル3と同等でしょう。
それがおそらく2023年、遅くても2025年には日本で買える車になると予想しています。つまり補助金込みで、100万円台で買えるテスラのEVが日本市場に入ってくるのです。