最新記事

自動車

テスラの高性能EVが100万円代、中国からは50万円を切る小型EV...  日本車が迎える「黒船」の脅威

2021年6月25日(金)20時35分
五味 康隆(モータージャーナリスト) *PRESIDENT Onlineからの転載

高級になるほど自動車は多数のAIチップを積み、「搭載チップの数=高性能の証し」とされていましたが、その価値判断は終焉を迎えるかもしれません。テスラでは電装系、運転系、運転支援系の3つしかありません。これはサプライヤーに頼らず、単独で開発を進めているから可能なことであり、結果、統合的な判断や制御が可能となります。

おそらく「すべてをテスラ自身で管理し、コントロール下に置かなければ、テスラの進化スピード、イノベーションについて来れない」という理念があるのでしょう。ここでもテスラは、業界の常識を打ち破っています。

日本人が知らないテスラの野望

日本人の多くはテスラについて、名前だけしか知りません。それはテスラが広告費ゼロの会社だからです。「車が良ければ自然に売れる」というスタンスで、日常的な唯一の広告といえるのは、イーロン・マスクが自ら発信しているツイッターぐらい。なので、関心のない人にはテスラの情報は何も入ってきません。

例えば2021年1月にはモデルSが大幅にリニューアルされ、上位グレードは航続距離837km(アメリカEPA基準)、0-100km/h加速はスーパーカー以上の2.1秒となりました。これも日本ではまったく知られていませんが、自動車にくわしい人ならそのすごさが分かるでしょう。

テスラは運転支援の精度を高めるために、販売した車を用いて情報を収集し、リアルな公道で実証実験を行っています。テスラオーナーであれば、「今後の自動運転のためにデータ提供をしてくれますか」とクルマのモニター上で聞かれたことがあるでしょう。

ドライバーが運転支援機能を使わなくても、テスラ車では裏で常に運転支援機能が「このときにはこういう操作をする」という演算を行っています。そしてその結果と実際のドライバーの運転操作を照合させ、差異をデータとして収集しています。

そうやって集めたビッグデータをAIにディープラーニングさせて、それに基づいて車のファームウエアをアップデートしていく。その延長線上で、あらゆる環境で使える自動運転を実現させようとしているのです。

バッテリーごと交換できる中国のNIO

中国でも新しいEVの流れが勢いを増しています。

2014年創業の中国の「NIO(ニーオ・蔚来汽車)」は、「中国のテスラ」とも呼ばれる高級志向のEVベンチャーですが、2021年1月に、容量150kWhの電池を搭載し、1000kmもの航続距離を実現するセダンタイプの新型EV「ET7」を発表しています。

NIOは同時に「2022年には開発中の全固体電池を搭載可能とするシステムを展開する」とも発表し、株価が急騰しています。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 8
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 9
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中