東芝、経産省と一体で「物言う株主」に不当な影響 総会めぐる外部調査
東芝は、昨年7月の株主総会に関する調査報告書を公表し、同株主総会では、経済産業省と一体となって筆頭株主エフィッシモ・キャピタル・マネジメントの株主提案権の行使を妨げようと画策したなどと指摘されたことを明らかにした。写真は都内で2017年2月撮影(2021年 ロイター/Toru Hanai)
昨年7月の東芝株主総会について、株主から選任されて調査していた外部の弁護士は10日、「総会は公正に運営されたものとはいえない」と結論づけた。同社が経済産業省と一体となって、社外取締役の選任を提案していた筆頭株主などに不当な影響を与えたと認定した。
調査した弁護士3人は10日午後に報告書を公表。東芝や経産省の関係者が、株主対応について当時の菅義偉官房長官(現首相)のところへ説明に出向いていた可能性も指摘した。菅首相は同日夕、報告書の内容を否定した。
改正外為法の趣旨を逸脱
昨年の東芝の株主総会では、筆頭株主のエフィッシモ・キャピタル・マネジメントが同ファンドの共同創業者などを社外取締役に提案したが否決された。一部の議決権が結果に反映されなかったり、経産省の関係者が複数の海外株主に事前に接触していたことが明らかになっていた。
報告書によると、東芝は同総会における「物言う株主」への対応について経産省に支援を要請。改正外国為替法に基づく権限を背景とした不当な影響を規制を期待して同省と緊密に連携し、エフィッシモに株主提案を取り下げさせようとした。報告書は「改正外為法の趣旨を逸脱する目的で不当に株主提案権の行使を制約しようとするもの」としている。
改正外為法は、安全保障に関わる日本企業への外資規制を目的に、昨年6月に全面適用された法律。報告書は、東芝と経産省の行為は、安保上の理由でエフィッシモの提案を問題視して行われたと認めることは困難と指摘した。「随所に法令等に抵触する疑いのある行為すら見受けられる」という。
調査した弁護士は10日夕に開いた会見で、経産官僚の動きは国家公務員法が定める守秘義務に抵触しかねないと指摘した。担当課長がエフィッシモから得た他の株主宛てのレターを、東芝へ「逆流しないように」と述べたうえで送付していたことなどを問題視している。