「東京五輪は中止の方が日本経済に吉」 株式市場、開催のリスクを重視
競技場の建設などは昨年までに終わっている上、既に海外からの観客受け入れ見送りが決定されたほか、国内の感染状況も緊急事態宣言の再延長が見込まれるなど不安定なことから、実施される場合でも無観客となる可能性も十分あるとの見方が市場では根強い。そうなると消費の盛り上がりは期待できず、追加的な経済浮揚効果は限定的と見られる。
五輪開催の有無、景気を左右せず
三菱UFJ国際投信の野崎始エグゼクティブ・ファンドマネジャーは「株式市場にとって、オリンピックを実施するかしないかは、もはや大きな問題ではない」として、開催の有無自体は基本的に市場にはニュートラルとの見方を示しつつ、「ただ、この世論の中、実施した場合の、菅政権への影響は気になる」とつけ加える。
野村総研やソニーフィナンシャルホールディングス(SFH)などの試算でも、経済効果は最大で2兆円足らず、日本の名目国内総生産(GDP)の0.3%程度。コロナ禍に伴う国内消費の落ち込みはこれより大きいとみられる。
観光庁の調査によると昨年7─9月期の国内旅行消費額は3兆円程度と、2019年の6.7兆円から3.7兆円も低下しており、外食や娯楽の自粛の影響などもあわせると損失はさらに大きいと見込まれる、とSFHの宮嶋貴之シニアエコノミストは指摘する。
宮嶋氏は「日本の潜在成長率は0─0.5%程度でありGDP比で約0.3%の機会損失の発生は完全に看過できる規模とは言えないが、巷(ちまた)でけん伝される深刻な景気後退に陥るほどのインパクトはないだろう。大会開催の有無自体は景気を大きく左右するものではないが、感染の長期化は景気には明らかにマイナスだ」との見方を示した。
佐野日出之
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