コロナ禍で広がる「休肝日」 国内メーカーはノンアルコール飲料へシフト
世界全体ではビール製品の売上高に占めるノンアルコールビールの比率はわずか1%と推定されているが、急速な成長が予想されている。グローバル・マーケット・インサイトが1月に示した予測によれば、ノンアルコールビールのグローバル市場の規模は、2026年には対2019年比で65%増の290億ドル(3兆1668億円)にまで成長する可能性があるという。
味の改善
とはいえ、パンデミックを追い風にした日本でのブームは、多くの業界関係者にとっても予想外だった。このセグメントは長年にわたって勢いに乗り損ねてきたからだ。ユーロモニターのデータによれば、2019年の日本におけるビール製品売上高全体のうち、ビールテイスト飲料の売上高のシェアは5%以下であり、オーストラリアの20%、ドイツの12%に比べ大きく見劣りする。
サントリーの新浪剛史・最高経営責任者(CEO)も、ノンアルコールビールがようやく多くの人に飲まれるようになった原因は、コロナだけではなく味の改善にもあるという。
ビール各社はこの目標に向けて、通常の発酵過程で生まれる風味を真似るために使われてきた人工的な香料・甘味料の使用を減らす努力している。また、緩やかなアルコール成分除去を可能にする製造手法を採用し、それによってビールの風味を維持しようとするメーカーもある。
新浪CEOによると「ビールにどんどん近い味になってきた」ことで、消費者にようやく受け入れられるようになったという。
アサヒの新製品「ビアリー」はアルコール度数0.5度。ビールを醸造してから、できるだけアルコール分のみ除去する方法を採り、他のビール代替製品より「うまみとコク」があると宣伝している。
「ビアリー」が市場に登場するのは3月末だが、宣伝キャンペーンは発売開始に先駆けて始まっている。ニッチなカテゴリーとしては異例の扱いだ。アサヒでは今年、さらにビールテイスト飲料製品を追加する計画で、販売容量合計に占めるノンアルコール、微アルコール商品の割合を、2025年までに2019年比の3倍強の20%に増やすことを目指している。
キリンは2月末、ノンアルコールビール「グリーンズフリー」を刷新した。より高品質の麦芽と大麦、さらにはクラフトエールに特徴ある香りを添えるのに用いられるネルソンソービン種のホップを使用したというのが売り文句だ。サントリーも先日、ノンアルコール/ゼロカロリーのビールテイスト飲料「オールフリー」を新たなレシピのもとで刷新した。 アサヒ国内ビール事業でマーケティング本部長を務める 松山一雄氏は、通常のビールの訴求力は低下しており、これまでの主力顧客だったビールを愛好する男性以外に目を向けるべき時期だと語る。
「これまでは、20代から60代の人口8000万人のうち、日常的にお酒を楽しむ2000万人をターゲットにしてきた」と松山氏。「今後は全ての大人をお客様として捉える」ことでポテンシャルをつかみたいという。
Ritsuko Ando(翻訳:エァクレーレン)
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