最新記事

人民元

人民元は2021年中に基軸通貨になるのか?

THE YEAR OF THE RENMINBI?

2021年3月2日(火)06時45分
アルビンド・スブラマニアン(元インド政府首席経済顧問、印アショカ大学経済学教授)、ジョッシュ・フェルマン(JHコンサルティング・ディレクター)

magSR20210302theyearoftherenminbi-2.jpg

中国経済は新型コロナ危機からもより力強く回復している(北京の中国人民銀行前) TINGSHU WANG-REUTERS

歴史が教えるドルの末路

中国は金融制度への信頼を構築するため、財務レバレッジが高く、債務超過に陥っている金融機関にてこ入れする必要がある。次に、資本規制を解除して透明性を高め、投資家が疑念なしに国内金融市場に参入できるようにすべきだ。

その上で、資本規制の復活はないと確約し、いつでも自由に投資資金を移動できると保証しなければならない。

どれも短期間で達成できるものではない。変化が後戻りすることはないと投資家を納得させるには、さらに長い時間がかかるだろう。

その後に待つのは、統治主体への信頼構築という課題だ。中国は今もこれからも信頼できる経済パートナーだと、他国に認めてもらわなければならない。

とはいえ、中国政府が間違った針路を選択している現実を考えれば、これには輪をかけて多くの時間と努力が必要になる。

中国は昨年11月の東アジア地域包括的経済連携(RCEP)妥結に貢献したものの、主要貿易相手国の1つであるオーストラリアを、輸入制限措置というツールで政治的に処罰しようとしている。

香港では、国際的金融センターとしての位置付けに与える影響を顧みずに民主活動家らを弾圧。

アリババ共同創業者で、中国の金融市場を代表する起業家の馬雲(ジャック・マー)に圧力をかけ、経済政策の内向き化を告げる「双循環(2つの循環)」戦略を掲げる。

一方のアメリカも、特にドナルド・トランプ前大統領の下で、経済パートナーとしての信頼性に疑問符が付く行動をしてきたのは確かだ。

いい例が対イラン制裁だ。トランプ前政権は米金融機関に対して、イランとの直接取引だけでなく、イランで事業を行う外国金融機関との取引も禁じた。

その結果、多くの友好国・同盟国を含む他国は、アメリカの単独行動主義に対する自国の脆弱性を認識するようになっている。

今やドル支配には高い潜在的コストが付きまとう。危惧する欧州は、独自のクロスボーダー貿易決済メカニズムを急ピッチで構築した。

トランプは特定中国企業への投資も禁じ、中国の通信大手3社のニューヨーク証券取引所への上場廃止を迫った形になった。アメリカの金融支配による攻撃から自国企業を守るべく、中国当局は対策を検討中だ。

自らの「ソフトウエア」の信頼性をより大きく損なっているのはアメリカか、中国か。答えははっきりしない。ならば、ドル支配は不動だと思い込むのは禁物だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中