人民元は2021年中に基軸通貨になるのか?
THE YEAR OF THE RENMINBI?
歴史が教えるドルの末路
中国は金融制度への信頼を構築するため、財務レバレッジが高く、債務超過に陥っている金融機関にてこ入れする必要がある。次に、資本規制を解除して透明性を高め、投資家が疑念なしに国内金融市場に参入できるようにすべきだ。
その上で、資本規制の復活はないと確約し、いつでも自由に投資資金を移動できると保証しなければならない。
どれも短期間で達成できるものではない。変化が後戻りすることはないと投資家を納得させるには、さらに長い時間がかかるだろう。
その後に待つのは、統治主体への信頼構築という課題だ。中国は今もこれからも信頼できる経済パートナーだと、他国に認めてもらわなければならない。
とはいえ、中国政府が間違った針路を選択している現実を考えれば、これには輪をかけて多くの時間と努力が必要になる。
中国は昨年11月の東アジア地域包括的経済連携(RCEP)妥結に貢献したものの、主要貿易相手国の1つであるオーストラリアを、輸入制限措置というツールで政治的に処罰しようとしている。
香港では、国際的金融センターとしての位置付けに与える影響を顧みずに民主活動家らを弾圧。
アリババ共同創業者で、中国の金融市場を代表する起業家の馬雲(ジャック・マー)に圧力をかけ、経済政策の内向き化を告げる「双循環(2つの循環)」戦略を掲げる。
一方のアメリカも、特にドナルド・トランプ前大統領の下で、経済パートナーとしての信頼性に疑問符が付く行動をしてきたのは確かだ。
いい例が対イラン制裁だ。トランプ前政権は米金融機関に対して、イランとの直接取引だけでなく、イランで事業を行う外国金融機関との取引も禁じた。
その結果、多くの友好国・同盟国を含む他国は、アメリカの単独行動主義に対する自国の脆弱性を認識するようになっている。
今やドル支配には高い潜在的コストが付きまとう。危惧する欧州は、独自のクロスボーダー貿易決済メカニズムを急ピッチで構築した。
トランプは特定中国企業への投資も禁じ、中国の通信大手3社のニューヨーク証券取引所への上場廃止を迫った形になった。アメリカの金融支配による攻撃から自国企業を守るべく、中国当局は対策を検討中だ。
自らの「ソフトウエア」の信頼性をより大きく損なっているのはアメリカか、中国か。答えははっきりしない。ならば、ドル支配は不動だと思い込むのは禁物だ。