地銀再編、セールスフォース、ニトリ......その買収は、強者のM&Aか弱者のM&Aか
NTTは4兆3000億円を投じてNTTドコモを完全子会社化したが Issei Kato-REUTERS
<コロナ禍で今後M&Aのニーズが高まりそうだが、その目的が「さらに強くなる」ためかどうかの見極めが投資家には求められる>
(※1月5日発売の本誌「2021年に始める 投資超入門」特集より。編集部注:一部の情報は2020年12月末時点のものです)
リーマン・ショック以降、活況を呈してきた「市場」の1つがM&A(合併・買収)の分野だ。日本でも2019年には、年間のM&A件数が4000を超え過去最高に。ここ10年ほど、国内外を問わずM&A件数は増えている。
さすがにコロナ禍の影響が大きかった2020年は、件数自体が落ち込んだものの、話題を呼んだM&Aは多い。
セブン&アイ・ホールディングスによる米コンビニ3位のスピードウェイ買収(2兆2000億円)、ソフトバンクグループによる米エヌビディアへの半導体設計大手アーム売却(4兆2000億円)など大型案件が相次いだ。
「今後はM&Aのニーズがもっと増えていくだろう」と、ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストは言う。
何らかの事情で「割安」となった企業を自社の成長のために買収するというM&Aの一般的手法を考えた場合、コロナ禍は「絶好の買い場」だ。優勝劣敗がより鮮明となり、体力のある企業には買収余力が生まれ、逆の企業には売却が現実となる。
例えば2020年12月に発表された、企業向け顧客管理ソフトウエア大手、米セールスフォース・ドットコムによるスラック・テクノロジーズの買収。
コロナ禍で競合他社が軒並み業績と株価を伸ばすなか、ビジネスチャットを手掛けるも、その波に乗り切れずにいたスラックを、機に乗じたセールスフォースが「買い切った」格好だ。提供サービスの相互補完という面もあったにせよ、コロナ禍で生じた企業価値のギャップを突いたディールだったのは確かだろう。
また、そもそもセールスフォースは、創業以来買収を重ねて成長してきた企業でもある。「アメリカでは強者が買収でさらに強くなるタイプのM&Aが多い」と、JPモルガン証券の阪上亮太チーフ株式ストラテジストは言う。