最新記事

自動車

コロナ禍で自動車にもネット販売の波 日産は主力市場の米中で本腰

2020年11月9日(月)11時07分

ウェブサイトを通じた日産自動車の新車販売は伸びている。複数の関係者によると、中国・欧州・北米における今年上半期の販売は自社サイト経由が11%を占めた。写真は9月27日、北京国際自動車ショーで撮影(2020年 ロイター/Tingshu Wang)

実物を見て、触って、試乗するのが当たり前だった自動車の買い方が、新型コロナウイルスの影響で急速に「デジタル化」しつつある。消費者の変化に自動車各社が対応を迫られる中、日産自動車<7201.T>が本格的なオンライン販売に乗り出した。

とりわけ力を入れているのが主力市場の中国と米国。販売手法の大きな転換になることからディーラーの中には反発する声もあるが、日産にとっては業績が悪化する中でコスト削減につながる。また、新車のラインアップが少ない日産車を売るのに苦戦しているディーラーの間でも、修理など「アフターケアの収入が保証されるなら」と歓迎する声が聞かれる。

12日の決算発表で

ショールームに足を運びたがらくなった消費者行動の変化に、会社はどう適応しようとしているのか──。日産のある上級役員が同社の経営陣に説明を求めたところ、アシュワニ・グプタ最高執行責任者(COO)が7月下旬の取締役会でプレゼンテーションをした。

そのときのやり取りを知る複数の関係者によると、グプタ氏はインターネットを使った新車販売を強化すると説明。「車選びから納車まで、徹底したデジタルの旅を築きつつある」と話した。ネットで車を比較・検討し、試乗したいモデルを客の手元まで届け、一度も店舗へ行かずに購入プランを作れるようになると語ったという。

ウェブサイトを通じた日産の新車販売は伸びている。複数の関係者によると、中国・欧州・北米における今年上半期の販売は自社サイト経由が11%を占めた。関係者の1人によると、前年同期はそれほどネット販売の状況に注意を払っていなかったが、約半分の4─5%だったという。

「コロナの時代に本格化した新たな購買行動は、これから先もずっと続くものと考えている」と、この関係者は話す。「感染症の大流行は働き方、移動の仕方を変えた。その変化は自動車の買い方にも当てはまる」。

日産は11月12日に7─9月期の決算発表を予定している。ネット販売に関するこうした詳細はその際に公表する見通しだ。同社は今年度、通期で4700億円の営業赤字を見込んでいる。

日産本社の広報担当者はロイターの取材に対し、オンラインで買い物をする需要は新型コロナで一段と強まっており、日産はディーラーとともに顧客の要望に応えていくと回答した。

複数の関係者によると、日産がまず注力しているのが中国と北米だ。自動車の2大市場であると同時に、ネットショッピングの先進国でもある。米国では店舗在庫だけでなく、一定地域の在庫をすべて検索できるシステムを構築した。

中国はそこまでの在庫検索ができないものの、消費者がネットを使った買い物に慣れている。複数の関係者によると、今年は9月までに売れた約75万8000台のうち、17%がオンライン経由だった。

オンライン上で獲得した顧客と日産が位置付けるこうした消費者は、同社の公式サイト(中国では「車巴巴(チェババ)」、米国では「Nissan USA」)を訪れ、連絡先を残す。そして契約の最後まで、あるいは部分的にオンラインを使って自動車を買う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 5
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中