「やめておけ、マイナス金利」 欧州金融界、逆効果示唆する調査
ゼロに戻したスウェーデン
ユーロ圏と日本はマイナス金利を採用して何年にもなるが、インフレ率も成長率も回復していない、という指摘は以前から批判派の間で出ていた。
スウェーデンのルンド大学・経済経営学部のフレデリク・N・G・アンデション准教授は、同国経済ではマイナス金利のコストが便益を上回ったようだと言う。
同国中銀は昨年、主要政策金利を引き上げて0%に戻した。
アンデション氏はマイナス金利問題を詳細に研究した。金利がマイナスに下がった時、借り入れは確かに増えたが、資金は主に住宅投資に回り、不動産市場と家計債務を増大させた。
「お金を借り、自動車か何か、国内総生産(GDP)が増えるものを買うといった状況は見られなかった。住宅を買うためにお金を借りても景気刺激効果は得られない」
同氏によると、企業オーナーも投資を控えた。これは、マイナス金利が「危機の兆候」と受け止められる、というアネンコフ氏の指摘と呼応する。
銀行は手数料を課すか
ドイツのミュンスター大学がボランティア「投資家」300人超を対象に実施した実験では、銀行預金のような無リスク金利がマイナスになった時、リスクを取る行動に変化が生じる可能性が高いことが分かった。
Hannes Mohrschladt準教授によると、マイナス金利政策下で銀行が預金者に手数料を課すことはまれだが、ECBが追加利下げを行えば起こり得る。
ただ準教授は、利下げが「株式と不動産市場の価格をさらに押し上げる可能性」をECBは警戒すべきだと言う。
ルンド大のアンデション氏は、エビデンスを踏まえると、成長を押し上げるために中銀がマイナス金利政策を採用する必要はなさそうだと話す。「私なら、やめておけと言う。その価値はないと」
(Dhara Ranasinghe記者)
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