航空会社、徹底したコロナ対策で旅客呼び戻しへ 国際線の需要回復は3、4年後か
国内線の需要回復は1―2年後
もっとも、各社による感染防止対策の徹底と乗客の協力が広がれば、国内線の需要は1―2年程度でコロナ前の水準に回復するとの見方が多い。JPモルガン証券の姫野良太シニアアナリストは、各社の対策は「需要回復に一定程度の効果がある」と指摘。機内は「3密」のイメージが先行しやすいが、消毒など対策内容や空気循環システムが理解されれば「飛行機を安心と思い、利用する人は増える」とみている。
航空事業の指標の1つである座席利用率(ロードファクター)がコロナ前の水準に戻るのは2021年度下期と姫野氏は予想。訪日客が見込みにくい一方、国の需要喚起策「GO TO キャンペーン」を背景に国内旅行が盛んになるとみるためだ。
航空経営研究所の橋本安男主席研究員は「航空需要はGDP(国内総生産)の動きに連動する」と指摘する。経済協力開発機構(OECD)は、感染第1波で収束した場合、日本の21年実質GDPの成長率はプラス2.1%で、20年のマイナス6.0%からは回復基調になると予測している。橋本氏は、急激な落ち込みの後に徐々に需要を取り戻す「チェックマーク型」の軌道で回復するとみている。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の土谷康仁シニアアナリストは、コロナが一足先に落ち着きを見せたことで旅客需要が回復してきた中国と同様の動きが日本でも見込まれるとし「来年度には、コロナ以前(の需要水準)に戻る」と予想する。
中国民用航空局によると、5月の旅客数は前年同月比52.6%減で、4月の68.5%減から緩やかに回復している結果となった。
国際線の需要回復は3―4年後
一方、第2波のリスクがあるほか、各国の出入国制限解除の時期が不透明なため、国際線が回復するには3―4年ほどかかるとみられている。ANAとJALは、7月の国際線も当初計画の9割超の減便・運休を続ける。国際航空運送協会(IATA)も5月中旬、国際線需要が19年の水準に戻るのは24年ごろになるとの見通しを示した。
日本はまずタイなど4カ国と出入国制限緩和に向けた協議に入ったが、航空経営研究所の橋本氏は「需要回復への道のりは長く、緒についた段階にすぎない」と見る。
テレワークの普及も需要回復の逆風になる恐れがある。費用のかかる海外出張をテレワークで代替する動きが広がれば「コロナ前(の需要水準)に戻るのは難しい」とJPモルガン証券の姫野氏は考える。
岡三証券の山崎慎一シニアアナリストは「ワクチンなどの解決策がない限り(回復の)門は開きにくい」と指摘する。とりわけリスクに慎重な国民性の日本人は、海外渡航を抑制しやすいと予想している。
JALとANAは、国際線の復便や需要回復の時期について、現時点で回答できないとしている。
新田裕貴(編集:白木真紀、平田紀之)
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