最新記事

アメリカ経済

米、新型コロナの経済再開から1カ月 回復速い地域ほど感染拡大するジレンマ

2020年6月15日(月)11時28分

相反するデータ

携帯電話の位置情報から人の動きを分析するウナキャストによると、全米で小売店の客足は先週、2019年水準の20%以内にとどまった。一方、勤務時間管理のホームベースとクロノスによると、働いている人の割合は全業種にわたってもっと増えていた。対人距離を保つ措置が最も厳格化された4月には、活動は50%余り縮小していた。

11日に発表された週間失業保険統計も同じ方向性を示している。6日に終わった週の新規申請件数は減少し、5月30日までの週に失業保険受給総数は前週を下回った。事業を再開した企業が一部の労働者を復帰させた可能性を示すシグナルだ。

だが小売店の客足を示す統計は、地域間の格差が著しい。ウナキャストのデータによると、モンタナ州からアラマバ州を結ぶ一帯にあり、全米の約3分の1を占める各州では、客足は完全に回復したことが示されている。

一方、新型コロナの大流行で比較的早い段階から影響を受け打撃が深刻だった沿岸部の各州は、客足がほとんど回復していないことが示された。これらの州は大半が民主党の勢力が強い。3月13日に国家の緊急事態が宣言されて以降、19州は小売店の客足が2019年の水準に戻った日が1日もなく、そのうち14州は沿岸部の州だった。

だがロイターの分析では、これらの州は全般に、新規感染の抑え込みで、より着実な進展がみられる。

景気回復と新型コロナ感染動向の軌道が反対方向を向いていることは、今後数週間にわたってアナリストと政策決定者を悩ませることになりそうだ。

この難問は、10日の連邦公開市場委員会(FOMC)後のパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長による記者会見でも、中心的な話題だった。議長は、新型コロナのワクチンが開発されるか、有効な治療方法が見つかるまでは、感染抑制の取り組みが各州、市ごとに進められるため、失業率が数年にわたって高止まりする可能性があると述べた。


Howard Schneider

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【関連記事】
・東京都、新型コロナウイルス新規感染47人 40日ぶりで40人超え
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・ロンドンより東京の方が、新型コロナ拡大の条件は揃っているはずだった
・街に繰り出したカワウソの受難 高級魚アロワナを食べたら...


20200616issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年6月16日号(6月9日発売)は「米中新冷戦2020」特集。新型コロナと香港問題で我慢の限界を超え、デカップリングへ向かう米中の危うい未来。PLUS パックンがマジメに超解説「黒人暴行死抗議デモの裏事情」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

原油先物は下落、トランプ大統領の対ロ追加制裁警告で

ビジネス

2月鉱工業生産は4カ月ぶり上昇、基調は弱く「一進一

ビジネス

小売業販売2月は前年比1.4%増、ガソリン値上げ寄

ビジネス

日経平均は続落で寄り付く、米株安を嫌気 1200円
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    「炊き出し」現場ルポ 集まったのはホームレス、生…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 9
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 10
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中