米、新型コロナの経済再開から1カ月 回復速い地域ほど感染拡大するジレンマ
相反するデータ
携帯電話の位置情報から人の動きを分析するウナキャストによると、全米で小売店の客足は先週、2019年水準の20%以内にとどまった。一方、勤務時間管理のホームベースとクロノスによると、働いている人の割合は全業種にわたってもっと増えていた。対人距離を保つ措置が最も厳格化された4月には、活動は50%余り縮小していた。
11日に発表された週間失業保険統計も同じ方向性を示している。6日に終わった週の新規申請件数は減少し、5月30日までの週に失業保険受給総数は前週を下回った。事業を再開した企業が一部の労働者を復帰させた可能性を示すシグナルだ。
だが小売店の客足を示す統計は、地域間の格差が著しい。ウナキャストのデータによると、モンタナ州からアラマバ州を結ぶ一帯にあり、全米の約3分の1を占める各州では、客足は完全に回復したことが示されている。
一方、新型コロナの大流行で比較的早い段階から影響を受け打撃が深刻だった沿岸部の各州は、客足がほとんど回復していないことが示された。これらの州は大半が民主党の勢力が強い。3月13日に国家の緊急事態が宣言されて以降、19州は小売店の客足が2019年の水準に戻った日が1日もなく、そのうち14州は沿岸部の州だった。
だがロイターの分析では、これらの州は全般に、新規感染の抑え込みで、より着実な進展がみられる。
景気回復と新型コロナ感染動向の軌道が反対方向を向いていることは、今後数週間にわたってアナリストと政策決定者を悩ませることになりそうだ。
この難問は、10日の連邦公開市場委員会(FOMC)後のパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長による記者会見でも、中心的な話題だった。議長は、新型コロナのワクチンが開発されるか、有効な治療方法が見つかるまでは、感染抑制の取り組みが各州、市ごとに進められるため、失業率が数年にわたって高止まりする可能性があると述べた。
Howard Schneider
【関連記事】
・東京都、新型コロナウイルス新規感染47人 40日ぶりで40人超え
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・ロンドンより東京の方が、新型コロナ拡大の条件は揃っているはずだった
・街に繰り出したカワウソの受難 高級魚アロワナを食べたら...
2020年6月16日号(6月9日発売)は「米中新冷戦2020」特集。新型コロナと香港問題で我慢の限界を超え、デカップリングへ向かう米中の危うい未来。PLUS パックンがマジメに超解説「黒人暴行死抗議デモの裏事情」