韓国映画、Netflix配信に裁判所が「停止命令」 ポストコロナ時代の映画ビジネスにも影響か
ポストコロナ時代のコンテンツビジネス
今回の『狩りの時間』のように、コロナパンデミックの前と後では、映画とOTTの関係はがらりと変わってしまうだろう。今まで、ビデオ時代の先入観があった観客たちにとって「劇場で公開しない=B級映画」というイメージを抱きがちだった。しかし、今後はそうではなくなってくだろう。あえて劇場公開しないOTTストレートの大作もある、という認識に変わり、どこでどうやって映画を観るかということはさほど重要視されない時代になっていくだろう。
『狩りの時間』以外にも、そういった事例はすでに登場している。3月13日からテキサスで開催される予定だった音楽・映画・イノベーションの祭典サウス・バイ・サウス・ウエスト(SXSW)は新型コロナの影響で中止となったのだが、主催者側が「上映予定だった映画をアマゾンプライムと手を組んで無料配信する」と発表した。他にも、スピルバーグの映画会社ドリームワークスは、新作アニメ映画『トロールズ ミュージック★パワー』を、新型コロナの影響で劇場公開が難しいと判断、OTTと劇場の同時公開をしている。
さらに、現在営業停止しているアメリカの映画館の閉館が長引くと、公開待機中のディズニーの映画『ワンダーウーマン1984』『ブラック・ウィドウ』は、ディズニーが運営するOTT「ディズニープラス」を活用し、OTTとの同時公開もあり得るとの噂もすでに流れている。
危機的状況で手段を選ぶ余裕はないが......
映画作りに携わるスタッフ全員が「良い作品を生み出す」という共通の最終ゴールをもっているように、映画の海外売買スタッフは、制作国だけでなく一人でも多くの「世界の人にもこの映画を伝えること」がゴールである。この危機的状況化で、そのゴールを目指すために誰もが手段を選んでいる暇はないことは十分理解できる。
新型コロナの影響で公開が先延ばしになり、金銭的に追い詰められている制作会社の救済のためにもOTTの活躍は期待されるが、一方では新型コロナの感染終息後もOTT依存が定着してしまった場合、映画館というビジネスが成立しなくなり、映画業界全体の危機に繋がっていくかもしれない。
果たして今回裁判所が配信停止を命じた韓国映画『狩りの時間』はどうなるのか? それが劇場であれ、Netflixであれ、観客の皆さんがこの作品を観ることができたあかつきには、まずは映画を楽しむことに集中していただきたい。そのうえでこの作品を観てもらうために多くの人が努力したということと、ポストコロナ時代のOTTのありかたについて、少しだけ思い出していただけるとありがたい。