最新記事

映画

韓国映画、Netflix配信に裁判所が「停止命令」 ポストコロナ時代の映画ビジネスにも影響か

2020年4月8日(水)21時29分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

ポストコロナ時代のコンテンツビジネス

今回の『狩りの時間』のように、コロナパンデミックの前と後では、映画とOTTの関係はがらりと変わってしまうだろう。今まで、ビデオ時代の先入観があった観客たちにとって「劇場で公開しない=B級映画」というイメージを抱きがちだった。しかし、今後はそうではなくなってくだろう。あえて劇場公開しないOTTストレートの大作もある、という認識に変わり、どこでどうやって映画を観るかということはさほど重要視されない時代になっていくだろう。

『狩りの時間』以外にも、そういった事例はすでに登場している。3月13日からテキサスで開催される予定だった音楽・映画・イノベーションの祭典サウス・バイ・サウス・ウエスト(SXSW)は新型コロナの影響で中止となったのだが、主催者側が「上映予定だった映画をアマゾンプライムと手を組んで無料配信する」と発表した。他にも、スピルバーグの映画会社ドリームワークスは、新作アニメ映画『トロールズ ミュージック★パワー』を、新型コロナの影響で劇場公開が難しいと判断、OTTと劇場の同時公開をしている。

さらに、現在営業停止しているアメリカの映画館の閉館が長引くと、公開待機中のディズニーの映画『ワンダーウーマン1984』『ブラック・ウィドウ』は、ディズニーが運営するOTT「ディズニープラス」を活用し、OTTとの同時公開もあり得るとの噂もすでに流れている。

危機的状況で手段を選ぶ余裕はないが......

映画作りに携わるスタッフ全員が「良い作品を生み出す」という共通の最終ゴールをもっているように、映画の海外売買スタッフは、制作国だけでなく一人でも多くの「世界の人にもこの映画を伝えること」がゴールである。この危機的状況化で、そのゴールを目指すために誰もが手段を選んでいる暇はないことは十分理解できる。

新型コロナの影響で公開が先延ばしになり、金銭的に追い詰められている制作会社の救済のためにもOTTの活躍は期待されるが、一方では新型コロナの感染終息後もOTT依存が定着してしまった場合、映画館というビジネスが成立しなくなり、映画業界全体の危機に繋がっていくかもしれない。

果たして今回裁判所が配信停止を命じた韓国映画『狩りの時間』はどうなるのか? それが劇場であれ、Netflixであれ、観客の皆さんがこの作品を観ることができたあかつきには、まずは映画を楽しむことに集中していただきたい。そのうえでこの作品を観てもらうために多くの人が努力したということと、ポストコロナ時代のOTTのありかたについて、少しだけ思い出していただけるとありがたい。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

10月の全国消費者物価、電気補助金などで2カ月連続

ビジネス

欧州新車販売、10月は前年比横ばい EV移行加速=

ビジネス

ドイツ経済、企業倒産と債務リスクが上昇=連銀報告書

ビジネス

日産、タイ従業員1000人を削減・配置転換 生産集
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中