韓国映画、Netflix配信に裁判所が「停止命令」 ポストコロナ時代の映画ビジネスにも影響か
業界ルールを破る新作のNetflix配信
この問題が明るみになり、ニュースとして取り上げられるようになった3月末には、制作会社リトル・ビッグ・ピクチャーズ社長クォン・ジウォンがYTN FM 94.5ラジオ「センセン経済」に生出演した。
注目を集めたのは、劇場収入が利益のほとんどを占めるといわれる韓国映画業界で「劇場公開を諦めさせるほどの配信権料として、Netflixは一体いくら提示したのか?」という点だった。リトル・ビッグ・ピクチャーズは、海外版権会社に契約破棄保証金まで支払うと言っている。番組の中で具体的な金額が語られることはなかったが、「製作費が回収できる程度の金額」という表現をしていた。
仮に今回の『狩りの時間』が最終的にNetflixで配信され、人気を集めて成功例となれば、今後公開予定で既に海外版権が売られた作品も同様の手法をとる可能性がある。いつ新作を公開できるか分からないこの状況下で、すぐに手に入るキャッシュが欲しい映画制作会社は背に腹は代えられない。事実、クォン・ジウォン社長の元には他の制作会社数社から、「どういう風にNetflixに売ったのか。担当者を紹介して欲しい」という問い合わせが来ているという。
韓国の映画産業全体のイメージダウンにも
多くの人は、映画の海外配給権利が売り買いされていることはあまり知られていないだろう。海外でヒットした映画は、自動的に自分の国でも上映されると思っている人がほとんどだろう。しかし、スクリーンの裏では、版権を売る会社と買う会社が、一般的に7年間の期間限定で契約書を交わし、映画公開が終わった後も長い期間やり取りを続ける。
劇場公開からOTTによる世界配信に方向転換したことは、制作会社からすれば最善の方法だったのかもしれない。とはいえ、クォン社長からすれば、買い付けられた映画の契約を破棄しただけで、違約金を払えばすべてが終わる話だと思っているかもしれないが、海外販売元であるコンテンツパンダの立場からすると信頼関係に関わる問題だ。
すでに数社の韓国映画制作会社がクォン社長に問い合わせているように、今後、他の制作会社もクォン社長に追随してしまったら、海外の映画権利を扱う会社は、また同じことをされるかもしれないと、リスク回避の意味で韓国映画の買い付けを避ける可能性がある。これは韓国の映画産業全体のイメージダウンにもつながりかねない問題だ。