インド経済大失速 失望招いたモディ政権の景気対策
アジア第3位の規模を誇るインド経済が、ここ10年以上で最悪の減速に見舞われている。モディ政権がまとめた新たな連邦予算では、その停滞から脱するのは難しそうだ。写真はニューデリーの議会内で会見するモディ首相。2019年11月撮影(2020年 ロイター撮影/Altaf Hussain)
アジア第3位の規模を誇るインド経済は、ここ10年以上で最悪の減速に見舞われている。モディ政権がまとめた新たな連邦予算では、その停滞から脱するのは難しそうだ。
エコノミストらは、政府が約束する財政出動は控えめで、個人所得税の減税も小幅にとどまっていると指摘する。2020─21年の財政赤字目標を達成できないリスクもある。強気の歳入目標を達成するには、国営企業・金融機関の株式売却により約300億ドルを調達できるかどうかがカギになっているからだ。
1日に発表された4月からの新年度予算案において、政府は、インフラ・農業分野を中心とした150億ドル近くの歳出拡大を可能にするべく財政赤字目標を緩和する一方で、民営化を推進している。
エコノミストや産業界首脳らは、この予算案は長期的にはある程度の成長の足場になろうが、即効性のある景気対策としては不十分だとしている。
3月までの今年度、インド経済の成長率は過去11年間で最低の5%と予想されており、モディ首相に対するプレッシャーは高まっている。モディ首相はすでに、世論を二分する市民権法をめぐって批判を浴びている。
歳入の伸び悩みが政策の足かせに
野村グループのインド担当エコノミスト、ソナル・バルマ氏は「今回の予算案は、成長、インフレという点で中立的なものだと見ている」と述べ、金融セクターが抱える問題により、景気回復があるとしてもさらに遅れる可能性があるとの見方を示した。
インド政府は消費需要と投資の加速を狙って歳出拡大を提案しているが、エコノミストらによれば、歳入の伸び悩みによって手を縛られている状態にあり、それほど踏み込めないだろうという。
格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは、今回の予算案は実質・名目成長の鈍化による財政の困難を浮き彫りにするものであり、この状態は政府の予想よりも長く続く可能性があると述べている。
野村によれば、インドの国内総生産(GDP)は2019年第3四半期には年率4.5%となったのに続き、10─12月には4.3%まで低下した可能性が高いという。これは、過去6年以上見られなかった低水準だ。
エコノミストらによれば、インドは2020─21年の財政赤字を対GDP比3.5%に抑えるという目標を達成できないリスクを抱えている。政府は歳入の成長目標を10%近くに設定しているが、これは民営化によって約2兆1000億ルピー(300億ドル)を調達することが前提となっているからだ。
また、今回の予算案では不振にあえぐ金融セクター、住宅市場について新たなインセンティブが何ら提供されない一方で、個人所得税の改革案によって正味のプラスが生じるかどうかが不透明であることから、投資家・消費者のあいだでも失望感が見られる。
税務コンサルティング会社のアショク・マヘシュワリー&アソシエイツLLPのパートナー、アミット・マヘシュワリー氏は、「減税は納税者に対してそれほど大きな恩恵をもたらさないだろう」と述べ、貯蓄意欲を低下させ、市場金利を押し上げる可能性があると指摘する。