最新記事

日本経済

展望2020:金融 どうなる日本の政策金利 日銀マイナス金利解除の見方も

2020年1月4日(土)09時02分

2020年の円債市場における金利見通しが分かれている。写真は2010年8月、東京で撮影(2020年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

2020年の円債市場における金利見通しが分かれている。低下予想のシナリオは、景気の下振れや米国の大統領選挙の影響でリスクオフの流れが強まり、プラス利回りの超長期債への買いが強まるとの見方だ。一方で、世界経済が順調に改善すれば、日銀はマイナス金利政策からの脱却を目指し、金利上昇圧力が強まるとの予想も出ている。

市場関係者の見方は以下の通り。

フラットニング、景気に下振れリスク 需給も悪くない

野村証券 シニア金利ストラテジスト 中島武信氏

日米ともにインフレが高まっておらず、2020年は日銀、FRB(米連邦準備理事会)とも利下げにも利上げにも動かないとみている。このため、円債相場も大きく動くことはない見通しだが、あえて方向性を予想するとすれば、金利は低下方向だろう。

米経済はISM製造業景気指数など主要指標が下方向。欧州経済は自動車の新排ガス規制が重しになりそうだ。景気に関してはダウンサイドリスクの方が大きい。一方で、各国とも金融政策、財政政策ともに余地が乏しくなってきている。

需給的にも20年は悪くない。20年度の国債償還は、日銀保有分とすぐ償還される2年債を除くと、33兆円程度と19年度に続き巨額だ。地方債や財投機関債、政府保証債も20兆円程度償還される見通しとなっている。一方で、20年度の国債新規発行額は32兆円強にとどまる。

足元で、プラス金利で発行されている国債は20年、30年、40年しかない。当初発行予定額は計21.6兆円(今年度、来年度は22.2兆円)。10年債がプラス金利なら、25.2兆円発行予定があるので吸収できるが、10年債がマイナス金利で推移すれば、超長期債に買いが集中する構図が続き、フラットニングが進む可能性が大きい。

10年最長期国債利回り(長期金利)の予想レンジ:マイナス0.20%─プラス0.05%

米大統領選挙でリスクオフの動きも、イールドカーブはフラット化 

モルガン・スタンレーMUFG証券 エクゼクティブディレクター 杉崎弘一氏

日銀は2%の物価目標の達成は難しいことから政策を据え置くというのが、市場のコンセンサスだ。このため、政策金利のリスクバランスを動かす海外金利の動向と需給の2つが、引き続き円債市場のドライバーとなる。

上半期については、円金利は現行の水準で推移するだろう。19年12月に米中通商協議がいったんまとまった格好となり、市場では楽観的な見方が広がっている。このため、米金利が2.0%近辺まで上昇した場合、円金利の上昇圧力も強まる。

下半期は米大統領選挙が注目材料。民主党が勝利した場合はリスクオフになるという市場参加者の見方が多い。民主党の勝利の確率が高まるにつれて、市場はリスクオフのシナリオを織り込む動きになる。米金利は低下し、それにつれて円金利も低下する。プラス利回りの超長期ゾーンは選好され、イールドカーブはフラット化していく。

リスク要因としては、市場のテーマが日銀の追加緩和のリスクよりも、マイナス金利の副作用をどのように緩和していくのか、という方向に転換しつつあることだ。来年いずれかのタイミングでイールドカーブ・コントロール(YCC)政策の調整の議論が盛り上がった場合、金利上昇圧力が強まる可能性はある。

10年最長期国債利回り(長期金利)の予想レンジ:マイナス0.20%─プラス0.05%

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インドGDP、7─9月5.4%に鈍化 製造業と個人

ワールド

英運輸相が辞任、過去に有罪認める スターマー首相に

ワールド

トルコGDP、第3四半期2.1%に減速 高金利が重

ビジネス

ユーロ圏消費者物価指数、11月速報値は前年比+2.
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老けない食べ方の科学
特集:老けない食べ方の科学
2024年12月 3日号(11/26発売)

脳と体の若さを保ち、健康寿命を延ばす──最新研究に学ぶ「最強の食事法」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    BMI改善も可能? リンゴ酢の潜在力を示す研究結果
  • 2
    エスカレートする核トーク、米主要都市に落ちた場合の被害規模は想像を絶する
  • 3
    「時間制限食(TRE)」で脂肪はラクに落ちる...血糖値改善の可能性も【最新研究】
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式ト…
  • 6
    ペットの犬がヒョウに襲われ...監視カメラが記録した…
  • 7
    ウクライナ前線での試験運用にも成功、戦争を変える…
  • 8
    バルト海の海底ケーブル切断は中国船の破壊工作か
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    谷間が丸出し、下は穿かず? 母になったヘイリー・ビ…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳からでも間に合う【最新研究】
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 6
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式ト…
  • 9
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 10
    BMI改善も可能? リンゴ酢の潜在力を示す研究結果
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中