中国は世界一の「インフルエンサー経済」大国である
bunditinay-iStock.
<EC市場が世界一という中国で、「検索しないで買う」チャネルとして重要なのがインフルエンサー。彼らが所属するMCNとは何か。海外在住中国人インフルエンサーの有力MCN「速報醤」の創業者に聞いた>
中国の「網紅(インフルエンサー)経済」が面白い。
なにも中国の話をしなくとも、日本にもユーチューバーやインスタグラマーはたくさんいるし、米国やら他の国にもごまんといるではないか。そう思われる方もいるかもしれない。ただ、中国はこの方面では世界一の先進国なのだ。
経済産業省の通商白書2018年版には「各国のB2C EC市場のポテンシャル」という図がある。2016年時点で中国は規模(円の大きさ、9394億4000万ドル)、EC化率(横軸、小売りに占めるECの比率、19.1%)で世界一(下図)。その上、年平均成長率(縦軸、20.2%)でも先進国をはるかに上回る水準となっている。
実際、中国国家統計局が11月14日に発表した最新統計によると、社会消費品小売総額に占めるECの比率は既に36%にまで達している。
これほどまでにECが発展するためには、さまざまな販売チャネルが用意されていなければならない。その1つがインフルエンサーというわけだ。
アマゾンや楽天など日本で一般的に使われているECは、消費者が検索して欲しい商品を探し出すスタイルだが、ネットの検索を好まない、あるいは苦手だという人も少なくない。そういう人でもインフルエンサーの動画やSNSを見て、おすすめされている商品を買うのならば難しくない。しかも、中国のウェブサービスやアプリは動画やSNSからワンタップで購入ページに飛べる便利な作りになっている。
中国のインフルエンサー経済の実態を知るには、彼らインフルエンサーが所属する企業――MCN(マルチ・チャンネル・ネットワーク)と呼ばれる――を見るといい。日本ならばHIKAKINなどが所属するユーチューバー事務所として知られるUUUMが有名だが、中国には大小5000社ものMCNが存在しているという。
中国インフルエンサー経済の実態について、その5000社の中でも、海外在住中国人インフルエンサーの有力MCNである「速報醤」の創業者・賀詞氏に聞いた。
――速報醤について教えてください。
速報醤には100アカウントを超えるインフルエンサーが所属しています。そのフォロワー数を合計すると、3500万人超。コンテンツの月間閲覧数は15億PV(ページビュー)を超えており、中国の大手SNSである微博(ウェイボー)の海外MCNランキングでは1位を獲っています。
もともと私は日本で働いていたのですが、2010年に「日本流行毎日速報」(下写真)という微博アカウントを開設しました。飲食、ショッピング、観光など、日本の最新トレンドを伝えるアカウントです。自ら運営し、翌年にはフォロワー数は50万人にまで成長するなど、爆発的な成長を遂げました。
人気が出るにつれて、アニメや飲食、旅行など(日本情報の中でも)専門ジャンルに特化したアカウントを増やしていきました。2014年から正式に企業化し、多くのインフルエンサーが所属するMCNに発展しました。