ビジネスジェットの私的利用、米企業の租税負担に重圧
米国企業による社用ビジネスジェットの利用が金融危機前の水準に近づき、幹部が会社経費で社用機を私用に使う例も増えているなかで、こうした特権にいくらのコストがかかっているか、その実態は多くの投資家の目から隠されたままとなっている。写真は10月にラスベガスで開かれた全米ビジネス航空協会の展示会で撮影(2019年 ロイター/David Becker)
米国企業による社用ビジネスジェットの利用が金融危機前の水準に近づき、経営者や上級幹部たちが会社経費で社用機を私用に使う例も増えているなかで、こうした特権にいくらのコストがかかっているか、その実態は多くの投資家の目から隠されたままとなっている。
S&P500社のうち、最高経営責任者(CEO)による私用の社用機搭乗を認めている企業では、そうしたフライトに要する平均推定コストが、2017年の9万6532ドルから昨年は10万7286ドルと11%上昇した。
この数字は幹部報酬調査会社エクイラーが提供する最新のデータによるもので、金融危機の前年に当たる2007年の8万4636ドルに比べ、27%上昇している。
私的な利用のコストは経営幹部が課税されるべき所得だ。こうした推定は民間航空会社のフライトでファーストクラス料金に基づいている場合が多いが、社用機を使う場合は、実際のコストがはるかに高くなる。
トランプ規制で問題は深刻化
プライベート利用の目的は、家族との休暇から主要スポーツイベント観戦のための旅行、遠隔地にある家族の住居からの出勤などさまざまだが、問題は企業がこうしたフライトの費用を丸々負担しているというだけでなく、控除が適用できなくなるせいで企業の租税負担がかなり大きくなっている可能性があるという点にある。
というのも、内国歳入庁では、幹部個人による社用機使用に関する法人税額控除に関しては、その幹部による使用が生み出した業務上の推定価値を上限としているためである。
その結果、プライベート目的で社用機が使われた場合には、企業はパイロットの給与、メンテナンス費用、保険、機体の減価償却、リース費用など、さまざまな税額控除を利用できなくなる。
この問題をさらに深刻化させたのが、ドナルド・トランプ大統領が成立させた2017年減税・雇用法である。
法律事務所ウィンストン&ストローンLLPのパートナーを務める税金の専門家ルース・ワイマー氏によれば、この法律によって2種類のフライトに関する控除が廃止されてしまった。対象となったのは、純粋にビジネス上の接待(CEOがクライアントをゴルフの大会に誘うなど)、そして幹部が自宅から出勤するために社用機を使う場合であるという。
だが、米証券取引委員会(SEC)は、どの程度の費用が控除の適用外となったか開示を義務づけていないため、投資家には何も分からないままだ。