混迷の英「ブレグジット」総選挙、予測はAIで 世論調査頼みを見直し
英国で12月12日に実施される総選挙の結果は、金融投資家にとって、巨額の利益/損失の分岐点になりかねない。彼らは今、利用できる限りの予測ツールを揃えようとしている。写真はロンドンで10月撮影(2019年 ロイター/Toby Melville)
問い:英国議会の解散総選挙の結果をどうやって予測するか。ただし、非常に多くの世論調査が間違っており、有権者の半数は投票先を決めておらず、誰が勝つかではなく、どれくらいの差で勝つかが重要な要因であるとする。
答え:分からない。
英国で12月12日に実施される総選挙の結果は、金融投資家にとって、巨額の利益/損失の分岐点になりかねない。彼らは今、自分で何とか答えを出そうとして、人工知能による分析から民間の世論調査、さらにはブックメーカーの予想手法まで、利用できる限りの予測ツールを揃えようとしている。
もはや世論調査会社は頼りにならない―。これほど予測困難で、しかも金融投資にとって決定的に重要な選挙を前にして、ファンドマネジャーらはこう話す。世論調査会社が過去2回の英国の選挙で予測を失敗し、ブレグジットやトランプ氏当選についても大失策を演じたからだ。
「世論調査は実像をとらえていない」
ロンドンを本拠とするユーライゾンSLJでマクロ系ヘッジファンド・マネジャーを務めるスティーブン・ジェン氏は、「参考にするデータの85%はかつて世論調査の結果だったが、今では恐らく30%だ」と語る。「世界があまりに複雑になってしまい、かつては標準的な指標だった世論調査は、もはや実像を捉えていない」。
ロイターでは、アビバ、リーガル・アンド・ジェネラル、NNインベストメント・パートナーズ、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ、M&Gインベストメンツなど、20社を超える大口投資家にインタビューを行った。
インタビューでは、大半の投資家がAIベースの予測ツールを採用する考えを示した。選挙情勢を正確にとらえるには、ニュース報道やソーシャルメディア、ウェブ上での関心度、世論調査、ブックメーカーの予想オッズなどをさまざまに分析する必要があるからだ。
ブレグジット問題によって、伝統的な政治的色分けは揺らいでいる。ボリス・ジョンソン首相が率いる与党保守党は迅速な欧州連合(EU)離脱を主張し、主要野党である労働党は国民投票のやり直しを公約、他の党はEU残留を掲げている。
ジョンソン氏にとって、他党よりも多くの議席を得るだけでは十分ではないだろう。ブレグジット実現を確保するためには、議会での過半数が必要だ。それ以外の結果になれば、EU加盟継続をめぐる2回目の国民投票につながる可能性が高い。
重大な岐路につながる判断を迫られている中、最近の調査では、有権者の半分が態度未決定の「浮動票」であると考えられている。
BNPパリバで株式デリバティブ戦略グローバルヘッドを務めるエドワード・シング氏は、「率直に言って今回は、記憶にある限りで、圧倒的に最も予測困難な選挙だ」