波乱に満ちた2010年代 世界の金融市場を一変させた10のトレンド
シェールオイル
「水圧破砕法(フラッキング)」により米国は世界最大の産油国となった。生産量は日量1250万バレルと2010年の2倍だ。このうちシェールオイルは日量900万バレルを超える。2010年は100万バレルに届かなかった。米国は40年ぶりに石油の純輸出国となった。
シェールブームはエネルギーに関する議論がピーク供給からピーク需要に切り替わった一因だ。原油生産の急増は環境への懸念につながり、石油の供給過剰が供給不足よりも起こりやすくなる。
世界の自動車産業は1世紀以上にわたって内燃エンジンに依存してきたが、電池を搭載した自動車が業界の地図を変えつつある。電気自動車(EV)メーカー、米テスラの株価は2010年の上場時は17ドルだったが、現在は380ドルだ。
新世代のEVの開発に数千億ドルが投じられている。自動車用バッテリー業界は急成長しており、主要材料であるリチウムの需要は2025年までに3倍になる可能性がある。
これまでのところEVの販売台数は期待外れだ。現在販売されている100台のうちEVは2台にとどまっている。ガソリン車やディーゼル車のほうが安い上、EV用の充電インフラは限られていることが背景にある。
しかし地球温暖化への警戒感が高まり、政府が消費者のガソリン消費を抑えようとする中で、EV革命は止まらないようだ。
アルゴリズムとフラッシュクラッシュ
テクノロジーによる変革の力は為替取引にも及ぶ。10年前、ディーラーが銀行と顧客のために売買を行っていた。今日、電子取引は一部の商品の9割を占め10年間で倍増した。
もう一つのシフトがアルゴリズムだ。10年前にはほとんど存在していなかったアルゴリズム取引は現在Refinitiv FXallの為替スポット取引の20%を占めている。また国際決済銀行(BIS)はEBSでは注文の80%強がアルゴリズムによるものと推定している。
副作用の一つは為替レートが短時間で乱高下する「フラッシュクラッシュ」が頻繁に起きるようになったことだ。
こうした中、最も洗練されたアルゴリズムを入手できるものが勝ち組となる。世界の為替取引のほぼ半分を上位5行の銀行が扱っており、小規模な金融機関、そしてトレーダーは撤退を迫られる。
大麻
大麻はこの10年間で街角から株式市場へ移動(トリップ)した。2018年にナスダック市場に上場したカナダの医療用大麻大手ティルレイは米株式市場に上場する初の大麻企業となり、初日に36%急伸した。カナダが娯楽用大麻を合法化してから1年半で数百の大麻銘柄が取引されている。
大麻関連株はまた資産バブルも生んだ。オーロラ・カナビスやキャノピー・グロースなどの銘柄は「グリーンラッシュ」ともてはやされ、株価は数倍に上昇し2018年10月に頂点に達した。大麻関連銘柄のベンチマークであるオルタナティブ・ハーベストETFの上位10銘柄は時価総額が500億ドルに膨らんだ。しかし1年後、300億ドルが煙と化した。
高値からは下落したが大麻株が消えてなくなることはない。2020年はロンドン市場に一連の大麻株が上場するかもしれない。
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