EUの経済大国ドイツ、対中輸出に陰り 「蜜月」見直しの声も
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過去30年間、欧州最大の経済大国であるドイツにとって、自国製の自動車、機械、エンジニアリングツールに対する中国の旺盛な需要は、成長の安定した原動力として、歴代のドイツ政権もその恩恵をありがたく享受してきた。写真はドイツ・コンスタンツの街並み。2015年1月撮影(2019年 ロイター/Arnd Wiegmann)
過去30年間、欧州最大の経済大国であるドイツにとって、自国製の自動車、機械、エンジニアリングツールに対する中国の旺盛な需要は、成長の安定した原動力として、歴代のドイツ政権もその恩恵をありがたく享受してきた。
だがその勢いにも陰りが出始めている。中国経済は減速し、ドナルド・トランプ米大統領の「米国第一」政策がグローバル貿易に打撃を与え、かつてはドイツ巨大企業の顧客だった中国の工場がライバルになりつつある。
米中対立がブレーキに
いまドイツ経済は厳しい局面を迎えており、対中貿易の減速は厄介な問題だ。ドイツは今年第2四半期に0.1%のマイナス成長となり、一部のアナリストは、11月14日に発表される予定の第3四半期の国内総生産(GDP)データも同様の減少を示すと予想している。そうなれば、2013年以来初めてのリセッションに陥ることになる。
3.4兆ユーロ(3.8兆ドル)規模を持つドイツ経済のうち、対中国貿易が占める比率は決して大きくないが、ドイツ政府としては、年々成長を期待できる数少ないGDP構成要素の1つだった。
「メイド・イン・ジャーマニー」製品に対する中国からの需要は頭打ちになっており、一部には減少を示す指標もある。経済が停滞するなかで、かつて高収益を得られた輸出市場は従来ほど頼りにならないことが判明している。
ハンブルク港でシニアマネジャーを務めるアレックス・マッターン氏は、「中国は我が国にとって最も重要な貿易相手国だが、将来のトレンドは予測しがたい」と話す。この港でも、中国経済の減速と、米中間の対立が貿易にブレーキを掛けている兆候が現れている。
ドイツ・中国間の通商関係の落日と称するには時期尚早だが、猛烈な成長が一段落したことで、近年進めてきた中国との経済的連携のいっそうの強化がドイツにとってプラスだったのかいう議論が再燃している。
産業界の一部には、貿易を通じて中国が開放的な経済と公平な市場アクセスを備えた西側スタイルの国家に変わっていくという期待から、中国における人権侵害に目をつぶってきた政治家は、騙されていたという見方もある。
「希望的観測だったことが明らかになった」と語るのは、ドイツ産業連盟(BDI)のステファン・マイア氏。同氏は、ドイツはもっと現実主義的な対中国政策をとるべきだという主張で知られている。