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キャッシュレス決済

日本よりキャッシュレス進む東南アジア 屋台から配車サービスまで競争過熱

2019年10月23日(水)12時11分

写真はグラブの電子決済のロゴ。ホーチミンシティで10月15日撮影(2019年 ロイター/Yen Duong)

ホーチミンシティの金融街のすぐ脇に立ち並ぶ20数軒の屋台には、キャッシュレス決済可能をアピールするカラフルな幟(のぼり)が飾られている。決済システムを支えるのは、プライベート・エクイティ会社のウォーバーグ・ピンカス、配車サービスのグラブ、シンガポールの政府系ファンドGICなどだ。

屋台ではカニのスープからベトナム風サンドイッチのバインミーなど、ありとあらゆるものが売られているが、支払いにはベトナム国内28種類のキャッシュレス決済(eウォレット)のほとんどが使える。eウォレットを使えば、携帯電話経由での送金も可能だ。

eウォレット各社は、2027年までにキャッシュレス経済を実現するというベトナムの計画を追い風にしたいと考えており、黒字転換に向けて多くのユーザーを獲得しようと激しく競い合っている。

ベトナムは、東南アジアでeウォレット各社が繰り広げている激しい市場シェア争いのホットスポットのひとつだ。しかし、全ての事業者が生き残るわけではない。コンサルティング会社オリバーワイマンによれば、東南アジア地域のモバイル決済セクターは競争過剰で、すでに縮小を始めており、市場で支持される一般向けeウォレットは1国あたり2種類にとどまると予想されている。

肝心なのは資金力

オリバーワイマンでアジア太平洋地域のリテール/企業向け銀行ビジネス部門を率いるダンカン・ウッズ氏は、「eウォレット事業は、顧客を獲得・維持し、日常生活のなかでサービスを利用してもらうために巨額の投資をしている」と語る。

「これだけ多くのサービスが乱立している場合、肝心なのは、資金力に最も余裕があるのはどこかという点だ」

東南アジアにおいてeウォレット事業のライセンスを保持している企業は、少なくとも150社。グラブやゴジェク、テンセント・ホールディングス、アント・フィナンシャル、シンガポール・テレコム、エアアジア、その他多数のフィンテック企業が覇を競っている。

資金力豊富な企業は多い。グラブでは、決済サービスを重点分野としつつ、ベトナム事業に5億ドルを投じる計画だ。ソフトバンク傘下のビジョンファンドとGICは7月、eウォレット「VNペイ」の親会社に3億ドルを投資した。また「モモ」は1月にウォーバーグ・ピンカスから1億ドルを調達している。いずれもディールストリートアジアの報道による。

各社がモバイル決済市場における支配的な地位の確保を急ぐなかで、事業規模を拡大するために資金を使う企業もあれば、既存事業を買収する企業もある。野村総研では、市場規模は2025年には現在の7倍、1090億ドルに膨らむと推測している。

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