韓国・文在寅の賃上げ政策が招いたこと──映画館からスタッフが消えた
文在寅、映画館からスタッフを消す?
映画観覧料金が高騰する一方では、文在寅政権の最低賃金引き上げ政策などによって、映画館で働くアルバイトなどの人件費も年々上がっている。韓国の雇用労働部は今年8月、2020年までにアルバイトの最低賃金を8590ウォンに引き上げると発表した。すでに2018年には前年比16.4%、2019年には10.9%も引き上げられていて、映画館運営者は人件費に対応するため、いかに少ないスタッフローテーションで回すかが課題になっている。
そこで登場したのが、セルフ入場というシステムである。すでに日本でも一般的なセルフ発券機は定着しているが、それに加え、韓国の一部の映画館では入場の際のチケット確認もセルフで行うようになった。チケットもぎりの人件費の節約である。観客は、チケットに書かれているバーコードかQRコードを、入場口近くに設置してあるSELF-CHECK INの機械にかざして入場する仕組みだが、小さな映画館の場合はこの機械が設置されておらず、勝手に扉を開けて入場する劇場もある。
CGVの場合は、先ほど述べたように座席位置によっても値段が変わってくる。そうすると、安いチケットを買って、映画が始まったら高いチケットの空席に移動することもできるのではないか?または、チケットも買っていないのにセルフ入場できてしまうのではないか?という、悪知恵が働いてしまいそうだが、実は場内はカメラで監視されているようで、うっかり高額座席に座ってしまった人が、上映終了後出入り口で差額を請求されたという話もある。映画館もあの手この手でやりくりしているようだ。
さらに、人件費削減としてスナックコーナーも機械化されている。CGVではすでにセルフオーダーシステムで、お金のやり取りもすべて済ませた後、受取時のみ生身の人間と顔を合わせる。韓国三大シネコンチェーンの1つロッテシネマでは、ロビーに巨大自動販売機が登場し話題となった。また、上映と上映の間の掃除も映画館アルバイトの仕事だったが、単館系アート映画館では、水以外の飲食持ち込みを禁止している映画館も多い。もともと集中して鑑賞するタイプの作品が多いアート映画館だが、ポップコーンやジュースなどがこぼれているとそれを掃除するのに時間も人も必要となる。少人数で次の上映の準備をするためにも、劇場内を汚されないため禁止しているのだという。
映画の発展のために映画料金から3%が引かれ、それにより韓国の映画界が現在のように大きく発展してきた。このように、目に見える成果が出るのなら3%程度チケットに含まれていても誰も文句は言わないだろう。
日本は世界的に見ても映画料金の高い国だ。1900円を払って1本の映画を観るのならば、定額料金を払って映画やドラマを無制限で観られる配信サービスに、入った方が2カ月利用できると考える人が多いだろうというのもうなずける。
映画館からますます客足が遠のいていき、映画館は経営難からさらに観覧料を値上げするというような悪循環に陥っているように感じる。もしも、このスパイラルを止められるならば、映画館の無人化も必要なのかもしれない。もちろん、導入には雇用問題や機械購入の初期費用などの壁はあるが、現在のように、ただ単純に収入減を値上げで補うということだけでは、遠くない将来映画興行のシステムは成り立たなくなってしまうだろう。