ビジネスハブ香港、大規模デモがもたらすリスクで「存亡の危機」に
企業は業績悪化を警告
関係筋2人が明らかにしたところによると、中国の電子商取引大手アリババ・グループ・ホールディングは最大150億ドル規模の香港上場計画を延期した。
香港を拠点とする東亜銀行が21日発表した中間決算は、中国での評価損計上が響いて75%の減益となった。同行は、デモの長期化により中小企業に影響が及ぶとの警戒感を示した。
最近の決算発表でデモによる業績への悪影響に触れた企業は恒基兆業地産(ヘンダーソン・ランド・デベロップメント)、ホテル大手のシャングリラ・アジア、腕時計・宝飾品販売の英皇鐘表珠宝、百貨店経営の利福国際、香港鉄路など20社以上に上る。
外食・ホテル産業従業員労組によると、一部の組合員は経営側から事業の不振を理由に今月、無給休暇を取得するよう求められた。
中国本土の観光大手、中国旅行総社のYiu Si-wing会長によると、宿泊料金収入は8月に50%落ち込む見通しだ。通常は観光客の80%を占める中国本土からの観光客が政情不安から大きく落ち込んだという。
会議や展示会などイベントの延期も相次いでいる。宝飾品の業界団体は9月に予定されていた世界最大級の宝飾品展示会、香港ジュエリー・アンド・ジェム・フェアーについて主催者に延期を要請。米資産運用大手ブラックロックは9月に予定していた会議を来年2月に先延ばしした。
8000社以上が加盟する小売業の業界団体、香港零售管理協会は22日、家賃を半年間半額にするよう全家主に求め、政情悪化が続けば小売店の多くが人員削減を余儀なくされるだろうと警告した。
身動きとれぬ香港政府
香港政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は抗議行動が景気を損なうと繰り返し警告し、反政府派の重要な要求についてはいずれも拒否を貫いている。
行政長官は今月、教育や公益事業への補助や中小企業向け融資など総額24億ドルの景気刺激策を発表した。しかしアナリストによると、現状では企業も消費者も支出するムードになく、効果は出ていない。
2000年以降、香港の景気が困難にぶつかるたびに中国本土の景気の好調や中国政府の景気てこ入れ策が香港を救ってきた。しかし中国本土は今、ほぼ30年ぶりの厳しい景気減速に見舞われ、負債は過去最高の水準に積み上がっている。
オックスフォード大学のシニアエコノミスト、トミー・ウー氏は「香港は今回は独力だ」と述べた。
中国政府が強硬姿勢を強めていることが懸念の増大を招いている。米国は1992年に香港が英国から中国に返還された際、香港に対して中国本土とは異なる関税制度の適用を認めた。こうした扱いは香港が十分な独立性を保っていることが前提で、それだけに中国の武装警察部隊の動きは懸念を呼んでいる。
(Noah Sin記者、Lukas Job記者)
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