アマゾンが支配する自動化社会というディストピア
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技術の進歩のおかげで、小さくて身軽な業者は大規模な投資をしなくても消費者に商品を届けることができる。例として、ロバウーはファストフードを提供するフードトラックを挙げた。固定店舗と異なり、フードトラックは機敏だ。最適な時刻に、最適なエリアに移動して販売できる。フェイスブックや他のメディアを使用してメニューや場所の情報を発信し、特定の地域のニーズに合わせて商品を調整することも簡単だ。
「テクノロジーによって、新しい市場への参入コストが削減されたため、小売業界では巨大企業が減り、小規模企業の競合が増える」と彼は言う。「消費者の特定のニーズや欲求を満たすために、企業も多様化している。個々の業者の儲けは減るが、それでも業者の数は増え続ける」
おかげで、小売業界は2層に分かれた。高級なブティックタイプの店は主に富裕層を対象とし、安売り店は価格に敏感な消費者を狙う。「アメリカでは昨年に1000以上のディスカウント店がオープンした。そして高級志向のニッチな店も同様に増えている」と、ロバウーは言う。
一方で、減っているのはマーケティング業界で言う「バランスの取れた」店だ。つまり品質にも価格にも目配りする伝統的なデパートやショッピングモールなどの業態だ。
こうした「バランスの取れた」店舗の減少と、過去10年における中産階級の減少が並行していたのは当然だろう。「07〜17年の間に、世帯所得は単純平均で5万ドルも増加したが、増加分のほとんどは所得の上位20%の層のものだ」とロバウーは言う。
「実際、上位20%層が平均年収5万ドル以上を獲得し、逆に下位40%層では収入が減った。残り40%の中間層では世帯所得が1万ドル増えたが、支出も増加した。食料、住宅、交通費。さらに医療費は急上昇し、その上に携帯電話やネットなどデジタル関連の費用が必要だ。たいていの人はほかのものを買う余裕がなくなり、非常に価格に敏感になっている」
自動化への果てしない欲求
ディスカウント店は床面積当たりの従業員数が通常の店より少なく、賃金も低い傾向にある。従業員1人当たりの労働時間も減っている。シカゴに本拠を置く世界的な転職・再就職支援企業「チャレンジャー・グレイ&クリスマス」のジョン・チャレンジャーCEOによれば、こうした傾向は今後もっと顕著になりそうだ。
「80〜90年代に製造業に起きたことが小売業でも起きようとしている」と彼は言う。「店員がテクノロジーに勝てないこと、多くの従業員が既に職を失っていることは疑いようがない」
彼らはどこへ行ったのか。多くが流通部門、つまりトラックの運転や倉庫業務に流れた可能性が高い。