最新記事

自動車

売上30兆円突破のトヨタ、仲間と「リアルの力」でCASE時代を生き残れるか

2019年5月9日(木)19時30分

普及の鍵になる「仲間づくり」

一方、豊田社長はCASEの時代に「変えなければいけないこと」もあると強調。新たなビジネスモデルの方向性にも言及した。「ハイブリッド車(HV)までは、これまでのビジネスモデルは有効だったと思うが、新たなインフラを必要とする燃料電池車(FCV)や電気自動車(EV)では通用しないかもしれない」と話し、EVやFCVの導入にはまず「普及」が必要で、普及を進めるためには「仲間づくり」が鍵になると指摘した。

トヨタはEV基幹技術の開発会社でマツダなどとすでに組んでいるほか、車載用電池でパナソニックと、MaaS(次世代移動サービス)ではソフトバンクとそれぞれ提携している。HV関連技術の特許無償提供も仲間づくりの一環だ。

新たなビジネスモデルを考える上で、車を含めた町・社会全体という大きな視野で考える「コネクテッドシティ」という発想も必要だという。トヨタとパナソニックは9日、街づくり事業に関する合弁会社を設立することで合意したと発表した。

トヨタの寺師茂樹副社長は、例えば、大気汚染問題の解決にどのモビリティをどう役立てるかという戦略について、国・地域と一緒になってトヨタも考えることだと説明する。

車だけを売るのではなく、インフラが未整備でEVがすぐに導入できなければ、当面はHVで代替できるプランを提案するなど、中長期的な環境対応車のポートフォリオ戦略もセットにして提案する。

豊田社長は「トヨタの意見を聞いてみたい。トヨタに(プロジェクトの)メンバーに入ってほしい」というように、相手から「逆に選ばれるトヨタになっていきたい」と語った。こうした仲間との連携によって「トヨタが目指す『モビリティカンパニー』としてのビジネスモデル、『モビリティサービス・プラットフォーマー』への道が開けてくる」と考えるからだ。

ただ、トヨタが直面している課題は、ビジネスモデルだけではない。自動車業界関係者は「新興企業であっても、大手企業と対等に張り合えるチャンスがあるのが電動化時代。トヨタが得意なすり合わせ技術など『ものづくりの力』も生かしにくくなるとされる。『リアルの力』がどこまで有効なのか未知数だ」と話す。

CASEの技術開発には巨額の投資もかかる。ある大手企業幹部も「CASEのコスト負担に耐えられる企業が生き残る。トヨタにとっても試練だろう」と述べる。「大変革の時代は、何が正解かわからない」(豊田社長)だけに、トヨタの真価が問われることになる。

(白木真紀 編集:田巻一彦)

[東京 9日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20250121issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年1月21日号(1月15日発売)は「トランプ新政権ガイド」特集。1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響を読む


※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

尹大統領の逮捕状発付、韓国地裁 本格捜査へ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 10
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中