売上30兆円突破のトヨタ、仲間と「リアルの力」でCASE時代を生き残れるか
普及の鍵になる「仲間づくり」
一方、豊田社長はCASEの時代に「変えなければいけないこと」もあると強調。新たなビジネスモデルの方向性にも言及した。「ハイブリッド車(HV)までは、これまでのビジネスモデルは有効だったと思うが、新たなインフラを必要とする燃料電池車(FCV)や電気自動車(EV)では通用しないかもしれない」と話し、EVやFCVの導入にはまず「普及」が必要で、普及を進めるためには「仲間づくり」が鍵になると指摘した。
トヨタはEV基幹技術の開発会社でマツダなどとすでに組んでいるほか、車載用電池でパナソニックと、MaaS(次世代移動サービス)ではソフトバンクとそれぞれ提携している。HV関連技術の特許無償提供も仲間づくりの一環だ。
新たなビジネスモデルを考える上で、車を含めた町・社会全体という大きな視野で考える「コネクテッドシティ」という発想も必要だという。トヨタとパナソニックは9日、街づくり事業に関する合弁会社を設立することで合意したと発表した。
トヨタの寺師茂樹副社長は、例えば、大気汚染問題の解決にどのモビリティをどう役立てるかという戦略について、国・地域と一緒になってトヨタも考えることだと説明する。
車だけを売るのではなく、インフラが未整備でEVがすぐに導入できなければ、当面はHVで代替できるプランを提案するなど、中長期的な環境対応車のポートフォリオ戦略もセットにして提案する。
豊田社長は「トヨタの意見を聞いてみたい。トヨタに(プロジェクトの)メンバーに入ってほしい」というように、相手から「逆に選ばれるトヨタになっていきたい」と語った。こうした仲間との連携によって「トヨタが目指す『モビリティカンパニー』としてのビジネスモデル、『モビリティサービス・プラットフォーマー』への道が開けてくる」と考えるからだ。
ただ、トヨタが直面している課題は、ビジネスモデルだけではない。自動車業界関係者は「新興企業であっても、大手企業と対等に張り合えるチャンスがあるのが電動化時代。トヨタが得意なすり合わせ技術など『ものづくりの力』も生かしにくくなるとされる。『リアルの力』がどこまで有効なのか未知数だ」と話す。
CASEの技術開発には巨額の投資もかかる。ある大手企業幹部も「CASEのコスト負担に耐えられる企業が生き残る。トヨタにとっても試練だろう」と述べる。「大変革の時代は、何が正解かわからない」(豊田社長)だけに、トヨタの真価が問われることになる。
(白木真紀 編集:田巻一彦)
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