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高級ミニバン決戦 エルグランドvs.アルファード・ヴェルファイア、勝敗の決め手は?

2018年6月21日(木)15時45分
御堀 直嗣(モータージャーナリスト)※東洋経済オンラインより転載

国内にミニバンブームを引き起こしたのは、1994年に初代が登場したホンダ「オデッセイ」である。トヨタと日産は、ホンダの後を追うかたちで2代目「エスティマ」(2000年)や「プレサージュ」(1998年)を登場させている。

トヨタ・エスティマの初代は1990年に誕生し、それはオデッセイの1994年より早い。しかし初代エスティマは、キャブオーバー型のワンボックスカーの進化版であり、エンジンが運転席下に横置きで搭載されたミッドシップ形式の後輪駆動であった。卵のような丸みを帯びた外観は独創的で、従来のワンボックスカーとは一線を画す乗用車感覚や静粛性が人気を呼んだ。しかしエンジンを床下に搭載する方式は、ミニバンではなくワンボックスに分類される。また、初代の車体寸法はアルファードの前身といえるグランビアに近い。

一方、2世代目エスティマの前身といえるのは、初代エスティマの5ナンバー版、ルシーダ/エミーナと見ることができる。そしてオデッセイの人気を受けてモデルチェンジをした2世代目エスティマから、フロントエンジン・フロントドライブ(FF)になった経緯がある。やや複雑な相関関係だが、ミニバン誕生の過渡期の変遷である。

日産の初代エルグランドは、今日でいうSUV(スポーツ多目的車)の「テラノ」をベースにしたミニバンであり、乗用車の「アコード」を基に生まれた初代オデッセイに比べると車高の高い、いかにもSUVが基であるような、ゆったりとした走り方であった。

そして一世代で終わったグランビアの後を受け、アルファードが2002年に誕生する。同じ年に、フルモデルチェンジにより2世代目となったエルグランドが後輪駆動(FR)を継承したのに対し、アルファードはオデッセイと同様に前輪駆動(FF)へ転換した。

人気を大きく分けることになったのは...

この、FR(フロントエンジン・リアドライブ)を継続するか、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)へ転換するかの決断が、結果的にその後の両車の人気を大きく分けることになったのではないかと振り返ることができる。要約すれば、走行性能を追求するか、同乗者の快適性を追求するかの違いである。

もちろん、上級ミニバンである以上、客室内の広さは両車とも十分に確保される。しかし、FF化することにより、客室の床は可能な限り低く、かつ平らにできた。それによって乗降性が向上し、室内の座席配列や位置調節の幅を広げることをよりやりやすくなる。また室内のデザインも、運転者中心か、運転者含め乗員全員の心地よさを求めるかの違いも生まれてくる。

日産は、「GT‐R」や「フェアレディZ」など技術力を背景とした高性能車の印象が強く、ミニバンといえども運転が壮快であることを求めたのだろう。

ミニバン本来の価値とは何か考えたとき、それは7〜8人で乗れ、乗員すべてが快適に移動できることだ。もちろん、グランビア当時のようにワンボックスカーの流れを引きずり、カーブや横風の影響などで走りがややふらつくような走行の不安定さが顔を出すようでは、快適な移動はできない。しかしミニバンに高性能車のような走りは多くの人が求めていないのも事実である。

エルグランドはそこを見誤ったのだ。

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