中国人の欲しい物が変わった――アリババ越境ECトップ訪日の理由
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<アリババグループ越境EC部門の総経理にインタビュー。かつてより注目度の落ちた越境ECだが、実は以前を上回るほど活況を呈しており、しかも売れ筋商品に変化が訪れつつあるという>
「我々は(越境ECで)1億人の"新中産層"にアプローチしています。従来の人気商品である粉ミルクや紙おむつだけではなく、美容機器や生鮮食品、ワイン、ペットフードなど新たなジャンルを新中産層が求める"消費昇級"が起きているからです」
これはアリババグループの越境EC部門であるTモールグローバル(天猫国際)の劉鵬総経理の言葉だ。8月3日、富士ソフトアキバプラザ(東京・秋葉原)のアキバホールで開催された「アジア美容機器パートナーシップ」調印式のために訪日した劉氏に独占インタビューを行った。
越境ECは2015年から2016年にかけ、ポスト爆買いとして注目を集めた。「オムツ買い占め」や「12の神薬」(中国人に人気の高い日本の医薬品)などの記事が日本のメディアを騒がせたことを覚えている人もいるのではないか。
2016年初頭の政策変更により売り上げが急落したため、日本では一時期ほどの注目度はなくなったようだが、実は中国越境EC業界は以前を上回るほどの活況を呈している。しかも、売れ筋商品にも変化が生まれつつあり、例えばTモールグローバルにおける美容機器の売り上げは前年比6.4倍という爆発的な成長を示したという。
冒頭で劉総経理が語った「新中産層」「消費昇級」は近年、中国ビジネスではキーとなっているコンセプトだ。
新中産層とは現在、30代以下で大都市に住むサラリーマン層をイメージした言葉。親の援助もあってすでにマイホームを所持しており可処分所得が高い。また、ブランド品など自分のステータスを誇るような"メンツ消費"にはこだわらず、個性的で健康的、エコな商品を求める傾向が強いという。そのようなニーズに合わせて消費の質が上がっていくことを消費昇級(消費アップグレード)と呼ぶ。
新中産層は海外商品に対する注目度が高く、越境ECの主戦場になっているというわけだ。
【参考記事】中国人の収入は日本人より多い? 月給だけでは見えない懐事情
中国越境ECの歴史:「海淘」「代購」から制度変更の混乱まで
さて、ここでまず簡単に越境ECの歴史を振り返っておこう。越境ECとはもともとは「国境を越えた電子商取引」の意。平たく言えば、海外の物がお取り寄せできるネットショッピングである。
とはいっても、実は中国における「国境を越えた電子商取引」もいくつかのカテゴリに分かれる。2000年代前半から始まったのが「海淘」と「代購」だ。
海淘とは、アマゾンやeBayなど海外のECサイトで購入し中国に郵送してもらうという手法だ。転送代行サービス(顧客の代わりに現地国で荷物を受け取り、その後国際便で郵送する)を使うケースもある。
代購とは代理購入の意味で、留学生などを含めた中小零細事業者が顧客の代わりに現地国で購入し国際便で発送するというものだ。