最新記事

インド

第2次インドブーム到来、「ミセスワタナベ」の投資熱再び

日本からの投資拡大は、モディ首相が取り組む経済・市場改革に対する信認の表れ

2015年11月20日(金)12時22分

11月20日、世界で最も潤沢な資産を保有しているされる日本の個人投資家、いわゆる「ミセスワタナベ」がインドに続々と復帰、インドは有望な新興国として再び投資熱が高まっている。ムンバイで2013年8月撮影(2015年 ロイター/Danish Siddiqui)

 インドはわずか2年前には深刻な資本流出の危機に見舞われていたが、今では世界で最も潤沢な資産を保有しているされる日本の個人投資家、いわゆる「ミセスワタナベ」がインドに続々と復帰、有望な新興国として再び投資熱が高まっている。

 日銀の金融緩和に伴い、国内の債券利回りがかつてない低水準にはりつく中、より高い利回りへのニーズは強い。 予想される米利上げを前に、海外マネーがピークをつける兆しを見せるなか、インドにとって、日本からの投資の急回復は明るい材料だ。 インドは2013年、経常赤字が過去最悪を記録したことが警戒され、通貨ルピーが最安値に落ち込んだ。ここに来て日本からの投資が拡大していることは、昨年5月に就任したインドのモディ首相が取り組む経済・市場改革に対する信認の表れとも言えるだろう。

 昨年のモディ政権の誕生とインド市場を外国人に開放した一連の改革について、ファンドマネジャーたちは、日本からの投資を促進するのに貢献した、と口をそろえる。

 日本の個人投資家による投資信託を通じたインド投資は、10月は4620億円(約37億6000万ドル)となり、7年半ぶりの高水準に達した。モディ首相が就任した時期の投資額と比べて、倍以上に拡大している。日本マネーが大量に流出しているブラジルなどと対照的だ。

 イーストスプリング・インベストメンツ運用部シニアファンドマネージャー、藤原愛氏は「去年はモディ首相が大勝し、それについて報道も多くあり、インドで何かあったらしいということで、株のファンドなどにお金が入った」と指摘。「その後少し新鮮味がなくなって、一時資金流入が止まることもあったが、足元、他の国と比べた相対的位置が浮上して、再び注目が集まっていると感じる」との見方を示している。

 トムソン・ロイター・リッパーがまとめた最新のデータによると、日本の個人投資家は今年1─9月に、インド債券ファンドに18億ドルを投資しており、投資額は昨年の4億8960万ドルから急激に拡大した。その結果、現時点での保有残高は23億ドルに達しているという。

 インド投資が活発化した背景には、ブラジル、トルコなど、従来人気の高かった新興国の失速がある。高金利通貨の雄だったブラジルは、景気後退や汚職疑惑にともなう政権支持率の低下などで通貨レアルが9月に史上最安値をつけた。また、同じくトルコも政情の不安定化などで、一時の勢いはない。

 これに比べると、インドはインフレが大幅に緩和する一方、経済成長率は逆に中国を上回る勢いだ。

 三井住友アセットマネジメント営業企画部営業推進課長、前橋智明氏は、インド市場について「今回新興国が売られる局面でも、値下がりが少なかったため関心が高まっている。アジア各国が崩れる中で、販売担当者にとってもインドは相対的に売りやすいのではないか」と話す。

 ブラジルやインドネシア、トルコに投資する日本の債券ファンドは第3・四半期、合わせて2億9600万ドルの資金流出超となった。インドの債券に投資するファンドは2億9000万ドルの流入超だった。

 特に大きな打撃を受けているのは、日本の個人投資家の人気が最も高いブラジルだ。投信のブラジル債券保有残高は過去1年でほぼ半減し、直近では4270億円(約35億2000万ドル)に落ち込んだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中